まっくらやみのすぽっとらいと ページ7
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「夜ってさ、なんでこんなに暗いんだろうね」
物理的に暗い理由なんて俺だってわかるよ。
だけど、だけどこんなに暗くなくたっていいじゃんか。なんて馬鹿みたいに考える。
「いろいろ考えちゃうのも、全部夜のせいかな」
何か理由が欲しかった。一番に思いつくのは夜だった。
暗いから、引っ張られそうになってしまうから。
こんなことだらかに話したって変わらないけれど。それでも聞いてほしかった。
別に答えなんてなくてよかった。
ただ暗いだけの足元に、スポットライトが当たった気がした。
「ほんとはね、声が聞きたかっただけなの」
言わないでおくって決めたのに漏れ出す弱音。
ほんとは全然頼りないのに、それすらも気にせず受け止めてくれる伊沢が温かかった。
「間違いなんかじゃなくて、いざわがよかったの。」
きっと、きっと何も言わずに居てくれるから。
明日も明後日も普段通りに接してくれて、特に腫れ物扱いすることもなくそばにいてくれるから。
それに甘えたくなってしまう。
「こんな時間に、急にごめんね」
何も言われないにしろ、迷惑は迷惑で。
心配もかけちゃってて、情けないとは思う。
震える声。やっぱ弱いな、なんてね。
「お疲れ様。夜が暗いと、なんかそれに巻き込まれちゃうよね、」
そうだ。
夜の暗さに巻きこまれて自分迄暗くなる。
みんなそれに耐えてるのに、俺だけ弱いままで。
自己嫌悪。
それでも優しくしてくれる伊沢に小さく頷くことしかできない。
もういっそのこと、全て晒け出しちゃったら、絡まった糸は元に戻るのかな。
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