検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:9,466 hit

ほんとに、ばか ページ6





「あー、俺もそういう時あるわー、」

ごめんね、俺気づいてる。でも気づかないふりしてる。
俺が「間違えた」って言ったの、嘘だって分かってるんでしょ。
だって、ふたりきりだと外す敬語がついてるから。

…優しすぎるんだ、この人は。
だから、だから甘えてしまう。

俺の瞳から零れ落ちた水滴は無視して無理矢理口角をあげる。
まだ、だいじょうぶ。

きゅ、と少しきつくスマホを握れば画面の向こう側からした雨音。
外にいるみたいで、時々車の音がした。

「ね、今外?雨の音してる、」

そう聞けば小さく笑った伊沢さん。

「あー、ばれちゃった?」

…もしかして。
いやそれはないか、なんて自問自答を何度か繰り返す。

“家の前にいるかも”

なんて、変に期待しちゃったら。

それでも気になったものは止めれなくて、手に持ったままのスマホ以外何も持たずに家を出る。
ふと、後から声がした。
毎日飽きるほど聞いてるその声。大好きなその声。

「ふーくらさん!」

ばっ、なんて小学生みたいな話しかけ方。
あぁ、もう。傘もささずにわざわざ走ってきたの?

ほんとに、ほんとに馬鹿。

「伊沢、」

「うん」

「ばか、傘もささずに来たの?風邪引いちゃうじゃん。」

「うん」

「真っ暗なのに一人で来たの?危なすぎない?」

「うん」

何を言っても静かに頷いてくれるから、俺の不安も受け止めてくれる気がしちゃって。
あぁ、もう。瞳から溢れ出す雫も、全部雨のせいにしちゃえ。

「、あいたかった」


「知ってた、」


“だから会いに来たんじゃん”いつもみたいににかっと笑って伊沢はそう言う。
でもその笑顔にどこか寂しさを感じるのはどうして。



まっくらやみのすぽっとらいと→←よるはきらい



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.9/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
19人がお気に入り
設定タグ:QK , izfk , ノックイズ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:涙斗 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年5月1日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。