そんなの、いらない ページ3
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「ね、今外?雨の音、してる」
福良さんの家の近く。繋ぎっぱなしの電話の途中で聞かれた言葉。
「あー、ばれちゃった?」
でも、画面の向こう。同じ雨音が聞こえた。
あぁ、やっぱり。俺が見間違えるわけないんだって。
「ふーくらさん」
雨に濡れて冷えた体で、ぎゅっと抱きしめた。
傘をさした福良さんがまだ暖かいことに安心する。
ねぇ、そんな悲しい顔しないでよ。
「伊沢、」
「うん」
「ばか、傘ささずにきたの?風邪引いちゃうじゃん」
「うん」
「真っ暗なのにひとりできたの?危な過ぎない?」
「うん」
「おれ、まちがいって、いったのに、、」
「うん」
福良さんのその瞳からつー、と涙が溢れる。
ぎゅ、と俺を抱きしめ返してから、小さな声で福良さんが言った。
「あいたかった、」
知ってたよ。だから、だから会いに来たんだもん。
「夜って、なんでこんなに暗いんだろうね」
「いろいろ、考えちゃうのも真っ暗なせいかな」
俺より背丈の高い福良さんが、いつもより小さく見えたのはどうして。
さっきまで暗いだけだった夜に、スポットライトが当たった気がしたのはどうして。
福良さんの言葉を聞きながら考える。
どうしたら、この人はこんな悲しい顔をしないでいいの?
もしもそれが夜のせいなら、夜なんて…
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