ちょっと黙ってくれ。【歌い手】 (ページ4)

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ピアノを最初に始めたのは誰？…俺だよ。

小さい頃からずっと、まふは俺の真似をしたがった。俺がピアノを始めればピアノを始めて、俺がヴァイオリンに興味を持ったら同じく興味を持ち始める。

そして、いつも俺より上手くなってくんだ。

「………はああああああああ。」

すこしでも気を抜けば昔の劣等感をすぐに思い出す。この忌々しい記憶を捨てられる日は来るのだろうか。だけどこの思考はひとつの通知によって停止した。

後ろのポケットから携帯を取り出し、ホーム画面を見るとそらるさんからLINEが来ていた。簡潔に一言、ゲームやらない？だった。

そういえば1日オフって言ってたっけ？といつの日かの彼の発言を思い出して、いいですよと返信したら待っていたかのようにそらるさんから電話が来た。

「もしもし～。」

「あ理玖？俺。なにやる？」

「最近荒野に入ってないんで久々にやりたいです。」

「いいね、やろ。」

ゲーム用に買ったタブレットを手に取り電源を入れる。荒野に入れば久しぶりのログインボーナスをもらった。「入りました～」と一言かければそらるさんから招待が来てそれを承認する。

「そらるさん女の子なんすね。」

「うん。かわいいでしょ。」

「あー俺ロング派なんですよね。」

そらるさんのキャラはショートカットの女の子で、格好は水着というなかなかいまの時期には寒そうな格好だった。

準備完了を押すとゲームが始まる。久しぶりの激戦だ。せめて10位以内には入りてえなあ～。自分の腕が鈍ってないことを祈り待機時間を過ごす。

「にしても女の子寒そうですね。」

「知らない？女の子って生足命なんだよ。」

「志麻さんみたいなこと言わないでください。」

ええ～と笑うそらるさんに釣られて俺も笑った。

ああ、そらるさんの空気がすきだ。なにも考えないで、そのままの自分を出せる気がするから。マイペースだけど頼りになるときは頼りになる大人の先輩に、俺はすこしだけ憧れている。

「どこ行きますか。」

「セントラル。」

「俺久しぶりって言いましたよね？」

「へーきだよ守る守る。」

「うわ！男らしい！」

着いたセントラルには敵がたくさんいた。マップには至るところに足音マークが出て、早速銃声が聞こえていた。俺の近くにある銃は散弾銃しかない。

それでもないよりましかと拾った。よっしゃがんばろ。

「そういえば、まふまふの話していい？」

どうやら俺の平穏はここまでみたいだ。