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貴方side
一颯はこれ以上の幸せはないというふうに
幸せそうに笑っていた。
貴「あ、ちょっとトイレに行ってくるね。」
柊「あぁ。」
みんなに手を振ったあと、私はトイレに向かう。
ここのトイレまでの通路、長いんだよなぁ……。
甲「お。」
貴「あ、うんこ行ったの??」
甲「うるせぇよ。」
冗談冗談と行って女子トイレに入ろうとすると
隼人に腕を掴まれた。
貴「…どうしたの?」
甲「…ぶっきーと付き合ったってほんとかよ。」
私はそう聞かれて、ちょっと恥ずかしがりながら答えた。
貴「…うん、まだ最近だけどね。」
私は笑ってみせると隼人は私の腕を掴んだ手をだんだん緩めながら離した。
甲「そうかよ。」
貴「?」
甲「いや、なんでもない。」
「幸せにな。」━━━━━━━━━━━━━━━
そう言ってくれた彼に私は幸せそうな顔をしてみた。
いつもなら笑い返してくれるはずだけど、今回は違った。
寂しそうに笑って、私に背中を向けた。
貴「隼人…甲斐隼人!!!」
なんでかわかんないけどそう呼ばないと と私は思った。
私の声に隼人は振り返らずに止まった。
貴「ありがとう!!!」
そう少し遠く離れた隼人に言った。
そう言うと、やっぱり隼人はこっちに向かずに
手だけをふって、ポケットに手を突っ込んで戻って行った。
貴「…さっ、トイレトイレ…っと。」
用を足した後に、スマホの通知を確認する。
マインドボイスはあれから1度も消していない。
忘れないように。
あの日から数ヶ月しか経っていないのに、世間の人は事件のことや景山澪奈が亡くなったことさえ半分忘れている。
きっと今も。
誰かの言葉で喜んで、傷ついて、振り回された挙句 命を落とす人がいる。
貴「って、何考えてるんだろ。」
世界の悲しみ背負ってるなぁ…。
なんて、思いながら鏡の前で私を見た。
私はリップをひと塗りしてトイレを後にした。
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雫(プロフ) - 15猫さん» 何度も読み返していただけてるとは...!ありがとうございます。これからも愛読して下さると嬉しいです。 (2021年4月5日 15時) (レス) id: 443525fccc (このIDを非表示/違反報告)
15猫(プロフ) - 素敵な作品で感動しました!何度も読み返してます! (2021年4月2日 23時) (レス) id: 6f86e31a74 (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - ソーセージさん» こちらこそ、素敵な感想ありがとうございます!落ち着かない世の中ですが、体調に気を付けてお過ごしください! (2020年4月5日 15時) (レス) id: 443525fccc (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - 蒼炎さん» 返信、かなり遅れてすみません!私の作品を読んでいただきありがとうございます!面白いという言葉、とても嬉しい限りです!これからも、最高の作品を作るのでよろしくお願いします!! (2020年4月5日 15時) (レス) id: 443525fccc (このIDを非表示/違反報告)
ソーセージ(プロフ) - すっごく面白かったし、感動しました!!!こんなに素敵な作品をありがとうございますっ! (2020年4月5日 15時) (レス) id: 711a78eb36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雫 | 作成日時:2019年3月18日 22時