はい、あーん！【忍たま】

29　これは食満の話です ページ30

久々知は全力で誤解を解こうと奮闘した。
が、ユキのとある台詞により頭は別のことでいっぱいになる。
それは……？

「勝った方には高嶺先輩を好きにできる権をプレゼント！くう！私も飛び入り参加いいですか！」
「俺も！！！！！」 「ハチ！ハウス！」

高嶺Aを好きにできる権だった。
久々知は考えた、この権を利用すればAに豆腐を食わせることが出来るのでは？と。
いつも豆腐を持っていけばなにかと理由をつけて躱されてしまうのを、この権利を使えば食わせられるのでは！？と。
あんなに堂々と賄賂(米)を貰っているのなら避けるのは不可能なはず。

それが頭に浮かんだ瞬間、久々知兵助の脳はぶっ壊れた。


「伊作先輩、負けませんよ。高嶺Aに豆腐を食わせるのは僕です」
「ようやく認めたね！Aちゃんは絶対渡さないから！」


二人の間に火花が走る。
こうして、高嶺争奪戦が始まった。


……一方で、米俵に囲われご満悦なAのもとに、一人の六年生が向かう。
その六年生はAのそばに歩み寄ると、ぽんと肩を叩いた。


「……なんだ食満先輩か」
「なんだってなんだよ失礼な後輩だな」
「米俵が私の思いに応えてくれたのかと思って」
「んなわけあるか！」


その人物は、伊作と同じ六年は組の食満留三郎だった。ようやく出てきたね

食満はAの隣にどっかりと座ると、きり丸から買ったであろう飲み物を口にする。
そんな様子をAが見ていると、食満は何処からか取り出したであろう、もう一つの飲み物を手渡してきた。
くいくい、と手を動かしているのを見るに、飲めと言うのだろう。

「嫌ですよ何入ってるかわかんない汚水」
「お前は本当に失礼な後輩だな！？この炎天下だぞ！飲め！」
「ええ……」 「ええじゃない！」

そう、食満の言う通り本日は雲一つなしの超快晴。
こんな中水分もろくに摂らずにいれば水分不足で倒れてもおかしくない。
そうなるとまたお母さんが……訂正、伊作が怒りを露わにしてしまうだろう。
それを避けたかったと言うのも少なからずはあるが、純粋に心配している。

恐らくだが、この飲み物を口にするまで食満は永遠に手を差し出しているのだろう。
それは、面倒だったので、Aは渋々受け取り、もたもたと口にする。
口の中にひんやりとした感覚が伝わると、食満は安心したように視線を伊作の方へと向けた。


「Aちゃーん！水分補給できて偉いね！」
「えなにこわ、やっぱり返します食満先輩」 「もっとけ」

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