ロナルドウォー戦記【吸血鬼すぐ死ぬ】 (ページ4)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:1,089 hit

第4話「アルマジロ」ページ4

・

「ヌ！ヌ！ヌ！」「もうほんと無理……」

　……結果、目の前のアルマジロがあまりにも可愛く甘えるものだから、Aは根気負けした。
とはいえどうしても自分の身が大事なため、扉を進んで開けることはもちろん、ノックひとつ出来ないまま、悩みの種である「ロナルド吸血鬼退治事務所」の扉に寄りかかり、体を丸めながらぐすんと啜り泣き。

　そんなことは梅雨知らずか、はたまた知ってのことか、可愛らしいアルマジロはAのサマーニットをご機嫌にくんくんと引っ張り、早く入ろうとでも言わんばかりに催促をしている。

控えめに言って今すぐにでもここに入る前に死んでしまいたい。

　Aがぽろぽろと涙を流して扉に寄りかかっていると、突然ほんの少しだけ扉が揺れる。
直後に、「スナッ」と間抜けな声が聞こえた。

「えっな、なに！？」
「ヌァー！」

　突然のことにAは飛び上がり、扉の方を見つめるとどうだろう。
ほんの少しだけ開いた扉から、灰色の砂がぽろぽろと漏れているではないか。

……この時、Aはロナルドとかいうトラウマ確定ワードのせいでかき消されていたとある情報を思い出した。
そうだ、ここを記す地図には、大きく紫色の肌の吸血鬼が写っていたではないか。

　特に吸血鬼の出現が多いとされているシンヨコで、しかも空はすっかり紺色。
そんな中で目の前にある灰色の砂は、灰化した吸血鬼以外、考えられそうになかった。

「おいコラクソ砂ボケカスうんこ野郎！ジョンが入れなくて困ってるだろう……が……」
「っぴ」

吸血鬼怖い

前言撤回、中から出てきたのは吸血鬼以上に恐ろしいストーカー「あああロナルド」だった。
　未だ死んだままの吸血鬼は灰のまま床に広がっており、その灰を大切そうにアルマジロが集めている。
なんか知らんけど良かったね、君はその砂に会いたかったんだね。

「ちょ」
「てめえなにAちゃんのこと泣かせてんだクソ野郎ーーーーーッ！！」
「いやーーーー！！誤解でしかないーーーー！」

　先程までの涙が頬を伝い、それを見て勘違いしてか、目の前では不審者権ストーカーの「あああロナルド」が吸血鬼の灰を踏みつけにしている。

いや、あなたのせいですけど。

Aはそう思いながら、その場を全力で逃げ出した。
もちろん自宅に帰宅後、速攻連絡先も消したし、間違ってその番号に出ないよう、しっかりと目に焼き付けた。

・