第2話「序幕」 ページ2
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昨日は至高であった。
Aは緩まる頬を両の手で揉みながら、バイト先であるとあるコンビニへと歩みを進める。
買った本の内容がこのうえなく面白いこと面白いこと。
ついつい何度も読み返し、すっかり外は夜になっていた。
おまけに、追い討ちの深夜のエゴサーチによりかなりの寝不足である。
まあ、
「面白かったしいいかな……。」
また今日も読み返そう、擦りきれるほどに。
そう思い、バイト先である「ヴァミマ！！！」の自動ドアを潜る。
何故かAの方を見ながら汗をかいている店長に、にこやかに笑うと挨拶をした。
「店長、おはようござい……ま……」
「ﾋｭｯ……」
そうだ、昨日の出来事は本を買っただけではなかったではないか。
目の前の既視感ある男性を見て、思い出す。
昨日と違い、白と赤のシンプルなジャージに青いデニムパンツを履いている男性は、こちらを見て顔を真っ青に染めていた。
「ああ、昨日の変な人」
「う、うわああああああっ！！！」
あのとき、見覚えがあったのはうちの常連だったからか。
頭の中で納得したAは、両の手を合わせ、ぽんっ と軽い音を立てる。
すると、店長が右手をかざしてAに向かいこそこそと話しかけてきた。
……まあ、けしてこそこそではなく、目の前の男性に丸聞こえであるのだが。
「ほっ、ほらほら……Aちゃんロナ戦のファンでしょ！？握手握手」
「違いますけど。てか『ろなせん』ってなんですか」
「ヴエ！？嘘！？」
「くっそ店長騙しやがったなボケエエエ！」
「イヤイヤイヤ昨日発売する本って言えばロナ戦の続刊じゃないですか！それ好きって言えばそりゃそうでしょ！？」
「違かったじゃねえかよおおお！」
気が付くと、男性が店長に掴みかかっていた。
顔を赤面させて阿鼻叫喚している男性は昨日とはまるで異なり、かなり賑やかである。
営業妨害だ、通報してやろうかと思い、Aはスマホに手を伸ばす。
すると、突然騒ぐのをぴたりと止めた男性はAのスマホをこれでもかと凝視し始めた。
「え、連絡先交換してくれるんですか！？」
「は」
「ありがとう！お、俺の連絡先は……」
「は？」
気がつくと、Aのスマホには新たな連絡先……ロナルドが追加されていた。
え、いや……は、え……えぇ……。
Aの困惑は収まることを知らない
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作者名：タジロ | 作成日時：2022年4月24日 2時
