【イナGO】お嬢様のお気の召すままに。‐西野空編‐【天河原】６ (ページ6)

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第百五十六話ページ6

「英聖がお気に入りって、私が言ったのかしら？それとも…英聖が言っていたのかしら？教えて欲しいわ、西野空？」

睨みあう二人の顔が、私の問いかけでぽかん…と間抜けな顔になってしまう。おかしな事を聞いたつもりはないけれど、二人同時に同じ顔をされたらちょっと焦ってしまう。

黙ったまま、時計の針の音が部屋に響く。長い時間にも感じられる沈黙を破ったのは、喜多の堪え切れずに吹き出した笑い声だった。

喜「ふっ…ふふ、お嬢様っ…！」

「な、何よ！おかしな事でも言ったかしら？」

口元を抑え、既に堪え切れていないのに必死に笑いを隠そうとする喜多につられて、英聖と西野空も笑い始める。みんな普通に笑い始めて、帰ってきた時の雰囲気がまるで嘘みたいだ。

喜「い、ふふ…ッ、ぃいえ、ごほん。失礼いたしました。」

「まだ顔がニヤけてるままよ、喜多。ホント、失礼だわ」

隼「怒らないでくれよ、A。怒った顔も可愛いけど、俺は笑った顔の方が好きだぜ」

「茶化さないで、英聖」

西野空の傍から離れて私の隣に座り、手を取って甲に唇を落とす英聖。さっきまでの怒りが無くなってすっかりご機嫌な英聖に、今度は私がむすっとしてしまう。

そんな私の顔を見て、英聖は頬を緩めて私を抱きしめた。暑苦しくてすぐに押しのけたいけれど、英聖がこうして触れるのは私だけと言う優越感の方が大きくなってそのまま放置する。

隼「ハハッ、悪いな。でもまぁ、そうだよな…二人からすりゃ、俺は"お嬢様のお気に入り"と思われても仕方ないと思うぜ？」

「本当に何なのよ、答えてくれないのかしら？」

西「…それ、だよ」

はあ、と大きな溜息を吐いてまた胡坐をかいている西野空が、私と英聖を指さした。堂々と溜息を吐くなんて失礼にも程がある、と怒り飛ばしてしまいたいのをぐっと堪えて英聖を見る。

指をさされるだけでは何のことか全く解らない。笑っているだけの英聖に首を傾げて、もう一度西野空の方を見ると割かし大きめの舌打ちが聞こえ、驚いて目を見張った。

西「あぁ、もう！距離感がおかしいって言ってんの！きょ！り！か！ん!!隼総の事は名前呼びで？着替えまで任せちゃって、随分仲が良くなっちゃって。ずるくなぁい？」

喜「確かに、俺もそう思いますね。ふふ…」

未だに笑いが止まらない失礼な喜多を少し睨みつつ西野空に言われて英聖の方を見ると、これまたいつもより嬉しそうな笑みを浮かべている英聖と目が合った。