第八十八話 ページ28
「お水、お水…は、っと」
キッチンに着き、明かりをつけて戸棚からコップを取り出す。
お水を入れて渡すと、隼総は口を濯いだ。
隼「サンキュ」
コップを流し台に置いて、私の頭を撫でる隼総
頭を撫でられるのは嫌いじゃない。
それに、私を撫でる時の隼総は優しい顔をしている。
「触れて、大丈夫なの？」
撫でられながら、隼総に問いかける。
隼総は優しい顔のまま、頭を撫でている手を私の頬に移動させた。
その手は微かに震えていて、大丈夫じゃ無い事を示している。
隼「正直、全然ダメだ。
今も手が震えている。
さっきも惚れた女が目の前にいるのに、男にもなれなかった」
「??隼総はずっと男の子でしょう？」
隼「そういう意味じゃないんだが…」
また苦笑いする隼総
なんだか、隼総の言うことは良く分からない。
でもきっと、聞いても隼総は教えてくれないだろう。
それが分かってしまい、黙り込んだ。
隼「でも、触れたいんだ。
前は自分の弱いところをあんまり見せたくなくて突き放した。
まぁ、もう何度も見られてるから意味ないだろうが。
自分の惚れた女に自分の弱いところを見られるのは嫌なんだ」
頬から手を離し、私の手を取る隼総。
そして跪くようにしゃがんで、私の顔を見上げた。
隼「俺は女性恐怖症を治したい。完全にはきっと無理かもしれない
でも、Aとこれから先一緒に居たいんだ。俺の全てをAに捧げる。
Aは俺の全てだ。絶対に離したくない。離れたくないんだ。」
「は、隼総…っ⁉
一体何を、恥ずかしいわよ…」
隼総から目をそらして顔を隠す。
突然、こんな恥ずかしいことを言われたらどんな顔をしたらいいのか分からないわ。
隼「ごめんごめん。
きっと意味わかんないだろうが、いつか俺が男に戻れたら。
他の三人には負けないぐらいAに愛を囁く。行動にも示す。
もちろん、剣城にだって負けない。それぐらい、俺はAだけを見て今まで生きてきたんだ。
だから…」
一度黙って、隼総は私の手の甲にキスをする。
それにビックリして隼総を見ると、手の甲から唇を離してまたさっきのような優しい顔をした。
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作者名：汰ると | 作成日時：2018年6月29日 5時
