第七十五話 ページ15
「無理よ。
だって、そんな事言われても困るわ。
私には、あいつを治すなんて出来ない」
目を伏せたまま、顔を上げて返事をする。
なんだか顔を見るのが、怖い。
光「出来るよ、おじょーさまなら。ね」
私の両頬が光良の両手で包まれて、ビックリして光良の顔を見る。
何の根拠もないはずなのに、自信ありげに笑って真っ直ぐ私の目を見る光良。
どうしてそんな風に言い切れるんだろう。
もし、出来なかったらどうするの？
「もしかしたら、隼総を傷つけるだけになるかもしれないわ。
だって、私は隼総の事好きじゃないもの。」
光「そんな事ぐらい知ってるっつーの。
前に隼総がね、おじょーさまにいつも会ってたんだって楽しそうに俺に話してくれた事あるんだ
女嫌いの癖にね、あんたの話する時の隼総ってすっげぇいい顔するんだぜ
だから出来るよ、Aなら」
「っ…！」
ニッと笑う光良。
その笑顔を見ると、光良の言う通りなんだか出来る気がしてきた。
気の持ちよう、なのかも知れないけれど。
「じゃあこれで、貸し借り無しよ」
光良の両手を払いのけて立ち上がる。
顔を見るのが恥ずかしいから、空を見上げながら返事をすると、下から光良の少し驚く声が聞こえた。
光「…本当に？」
「あんたが私なら出来るって言ったんでしょう。
何よ、やっぱり私には無理って言いたいわけ!?」
光「ちっ、違うって！
ありがとう!!Aっ」
「きゃっ!」
ガバッと後ろから光良に抱きつかれる。
一気に体が暑くなる。
それは抱きつかれたからなのか、恥ずかしいからかなのか。
答えなんて知らなくていいけれど。
「気安く触らないで！
私に許可なく勝手に触れていいのは京介だけなの。」
光「あぁ、ごめんごめん。
嬉しくてつい、な」
むぅっと頬を膨らませると、光良は急いで離れて両手を合わせて謝る。
憎めない奴って、こういう人の事を言うんだろう。
「…名前で呼ぶことは、許可してあげるわ。
特別よ。」
光「ひゃはは！
Aってほんっとうに高飛車だよな〜」
「喧嘩売ってる!?」
まさか、と言いながら笑い続ける光良
イライラしながらもう一度その場に座ってため息をつく。
光良は何も考えて無さそうな顔して、隼総の事たくさん考えてる。
つい、隼総の女嫌いを治すなんて言っちゃったけど。
私に、出来るのかな…。
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作者名：汰ると | 作成日時：2018年6月29日 5時
