26話 ページ27
澄んだ声が。
「息をゆっくり吐くんだよ。5秒以上は掛けて」
私は回らない頭で、それに従った。
回らなくったって頭は頭で。恥ずかしくて私がこんなになる権利はないのにどうして？あなたにこうして貰えて嬉しくて、もう離さなくってもいいですかね、なんてぐらぐらと考えていしまっていたけれど。
「……少し、落ち着いた？」
彼の胸の中でこくりと頷く。
申し訳がない。居た堪れなくて、彼の顔が見られない。
見られないのに、自分の熱い体温とリドルさんのあたたかさ、嗅ぎ慣れないリドルさんの服のにおいに、思考がとろとろしていくのがわかる。呼吸が落ち着いたら、急に安心してしまった。
後に残ったのは、申し訳なさだけだった。
「……無様な姿を」
「いいよ」
彼に何を言えば良いのか、わからない。
けれど、彼の腰から手を離す勇気もなく。
「……落ち着いたなら、」
「……」
「あの……」
「……」
リドルさんも離せとは言い辛い様子で、申し訳がないのだけれど。
「……話すには少し、近すぎるかなと」
「ちょうどいいと思います」
「……そうか」
彼は苦笑する。
「キミのそう言う姿はあまり見たことがなかったから、新鮮だよ」
「……」
「……どう、しようかな」
リドルさんの声は本当にどうしようか困っている様子で、申し訳ないとは思うけれど。
「……はじめての患者さんに、なれましたね」
「……あ、そうか。……そうかもしれない」
「そうですよ」
キスでもしてくれたらよかったのに、なんて彼に求めるには到底無理なことを今更のように考えるけれど。
「……あなたに、幸せになってほしい、な」
あまりにも本心な言葉が、口から滑り落ちて。本心すぎて、率直すぎて、部屋の空気が変わったのがわかった。
リドルさんは、首をそうと曲げて、私の次の言葉を待ってくれていて、ねえ、あなたが好きなんです！って駄々を捏ねたいような気分にすらなった。
涙が止まらない。ぐしゅぐしゅと鼻を鳴らしながら。
「あなたが幸せになる為にだったら、私はなんでもします。今まで友だちとやってみたいと思っていたこと、お嫌でなければ私と全部やりましょう」
「……どうして」
「あなたのことが好きだからです」
「……誰にでも、言っているの」
「そんなわけ！」
「……なら、どうして」
「……」
どうしてだかは、わかっていた。
私たち、似てるんです。いいえ、私が勝手にそう思ってるとこもあるかもしれませんけど、でも。似てるから。似てるから。
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特になし(プロフ) - オタクさん» ありがとうございます🥰💕嬉しい…… (2022年4月8日 18時) (
レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
オタク(プロフ) - とっても面白いです！特になしさんの作品はとても奥が深いというか、考えてみればみるほど面白いです！私にはない発想…素晴らしいです。 (2022年4月8日 17時) (レス) id: 108e4cfb5a (このIDを非表示/違反報告)
特になし(プロフ) - もふ田もふ猫。さん» もふ田もふ猫さん前作に引き続き読んでくださってコメントまでしてくださって誠にありがとうございます…💋あまりにも嬉しい…… (2021年9月22日 21時) (レス) @page29 id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
もふ田もふ猫。(プロフ) - リドル君も夢主さんも素敵すぎる…！こんなに魅力的で｢魔性｣って感じの夢主を初めて見ました。大好きです！！ (2021年9月22日 20時) (レス) @page36 id: 2107166e13 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 特になしさん» 知ってるアニメは何ですか？ (2021年9月20日 17時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
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