16話 ページ17
「ねえ、リドルさん」
「ん？何だい」
勉強会は自由参加自由解散な為、最後に二人だけが残った。
夕焼けに染まる薔薇の庭園は、思わず言葉を失いぼうっと眺めてしまうほどに美しい。
そんな中資料を整えているリドルさんの声と表情は心なしか優しくて、上機嫌なのが感じ取れる。
「ぎゅー、しませんか」
腕を開いて言う。
リドルさんはこちらを向いて、目元に紅を散らして目を逸らして、溜め息を吐いた。
「……こんな場所で」
「リドルさんの部屋か、私の部屋に移動しますか？」
その方が大仰ですし、恥ずかしそうですけど。
なんて付け足すと、それはそうだと考えたのかリドルさんは再度目を逸らす。
沈黙が薔薇の庭園を流れる。
「……すみません、困らせました」
「え……？」
「夕焼けって、ちょっと寂しくなりますよね。それだけなので、大丈夫です」
手を膝の上に戻すと、その手の方にリドルさんは視線をやる。
その顔が少しだけ寂しそうに見えたから、そのまま無理矢理抱き着いて愛を囁いてやろうかと思うが、誠に残念ながら今日はその日ではないのだ。
わざと寂しげに目を逸らして微笑む。
「今日は、ありがとうございます。とっても楽しかった」
「……うん」
「ご迷惑をお掛けしましたか？強引かなと、思っていて」
「……いや、大丈夫だけれど」
「……すみません」
肩を落として立ち上がり、鞄を持った。
「……断れなかったのですよね、私が、あなたの弱みを持っている、という形になっているから」
「……い、いや……」
そもそもわざわざ断る理由がなかったのもそうだろうが、ある程度は図星だろう。リドルさんは居心地が悪そうに居住まいを正す。
「すみません、本当に」
「……」
「ごめんなさい」
きっちりと、一度頭を下げる。リドルさんは目を見開いて、唇を軽く食む。
「……違うよ、ボクは、そんな」
「NRC、辞めようかなと、少し考えていて」
「……え？」
「NRC卒、と言う肩書きが魔法医術士になるに有利なのは百も承知なのですが、男子校を卒業したというのを一生背負っていかないといけないとなると、そもそも生きていけるかが、不安で」
「……！」
ほんとうのことをいった。
困っている様子の演技は真に迫らなければ同情を買えないから、自分の心を揺らすために、わざと本当のことを話したつもりだったのに。それがわかっていれば、揺れないと思ったのに。
本当にぐらぐら、ゆらゆら心が揺れてしまっている感覚がする。
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特になし(プロフ) - オタクさん» ありがとうございます🥰💕嬉しい…… (2022年4月8日 18時) (
レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
オタク(プロフ) - とっても面白いです！特になしさんの作品はとても奥が深いというか、考えてみればみるほど面白いです！私にはない発想…素晴らしいです。 (2022年4月8日 17時) (レス) id: 108e4cfb5a (このIDを非表示/違反報告)
特になし(プロフ) - もふ田もふ猫。さん» もふ田もふ猫さん前作に引き続き読んでくださってコメントまでしてくださって誠にありがとうございます…💋あまりにも嬉しい…… (2021年9月22日 21時) (レス) @page29 id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
もふ田もふ猫。(プロフ) - リドル君も夢主さんも素敵すぎる…！こんなに魅力的で｢魔性｣って感じの夢主を初めて見ました。大好きです！！ (2021年9月22日 20時) (レス) @page36 id: 2107166e13 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 特になしさん» 知ってるアニメは何ですか？ (2021年9月20日 17時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
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