諸伏妹は今日も潜入中 ２

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「赤井秀一っていうんだ！カッコいいだろー？」

喉の奥でひゅう、いう音がした
やめて。もう彼のことは忘れたかった。嫌だ。
眠れなかった昨夜の悪夢を思い出して冷や汗が止まらない

「でもそのお兄さん、日本の駅のホームで見かけたんだよね？」

「あぁ、だからびっくりしたんだ」

「じゃあ、世良ちゃんにベース教えてくれたっていうお兄さんのお友達もFBIだったりして！」

「まさか！休暇中の日本で会った友達じゃないか？」

違う。彼は、私の兄は、警視庁公安部の潜入捜査官・諸伏景光…
君のお兄さんに殺された男だよ…

「ねぇ、その人にどんな風にベース教わったの？」

「あ！もうこんな時間だよ！Aさんお店に戻らなくて大丈夫なの？」

私の異変を察知したであろうコナンくんがわざとらしい声を上げた

「大丈夫よ。世良さんのお話、興味あるの……良かったら、聞かせてくれない？」

「いいけど…アンタ、顔色悪いけど大丈夫か？」

軽く頷いて続きを促す
ヒロ兄が生きている姿を、私の知らないヒロ兄を知っている人がいるのなら例えそれが兄を殺した男の妹でも話は聞いておきたい

「…中学生の時、駅で秀兄を見つけて追いかけたんだ。そしたら見つかって、『帰れ』って怒られてさ。『切符買ってくるから１人で待ってろ』って言われて泣きそうな気分で待ってたんだ」

息継ぎをした彼女の間が焦れったく思える

「その時、兄の連れが声をかけてくれたんだよ。『君…音楽は好きか？』ってね！で、ドレミを教えてくれたんだ」

「だったらその人お兄さんの音楽仲間だったんじゃない？」

「それはないんじゃないか？」

へらりと笑った彼女を見ながら、髭を生やした兄を想う
『音楽は好きか？』…ねぇ？

「その人の名前聞いたの？」

「いや？聞いてないけど、遅れてきたもう一人の連れが彼のことをこう呼んでた…『スコッチ』ってね」

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