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妖精の唇を展示することを知らせる新聞に書いてあった「全方向から涼やかに見て頂けます」の意味がやっと分かった
妖精の唇は厚い氷の中に埋め込まれている
「これやったら全方向から涼やかに見れるわなァ…」
「所詮氷だから熱せば溶けるし、ドリルとかで削れないこともないんだがな…ジイさんが押し切ったんだよ」
気怠げに言うのは、警視庁刑事部捜査二課知能犯捜査係の中森警部
確か目暮警部の同期だったとかで、あまり良好な関係ではなかったことを覚えている
彼の言葉に、ジイさんこと鈴木次郎吉氏が不敵な笑みを浮かべた
「なに、心配には及ばんよ。溶かすにも時間がかかるし、ドリルを使っては宝石に傷をつけることなく取り出すことは不可能じゃ!それに、展示スペースは硬質ガラスで囲んで室温を下げておる。これなら氷が溶けにくいじゃろ?」
「ジイさんうまい事考えたのぅ!」
感嘆した様子の服部くんを鈴木氏が手を振って否定する
「儂の知恵ではないわ!」
大きく振り向いた鈴木氏の目が展示室の入口に向く
「助っ人に来て頂いた…長野県警捜査一課…」
そこで入って来た人物に目を奪われる
恐らく向こうもそうだろう
「諸伏高明警部の妙案じゃ!」
ばっと、その場の視線を集めた『諸伏警部』がそれを無視してこちらに歩みを寄せてくる
「……お久しぶりです」
「…お久しぶりです、諸伏警部……ご機嫌いかがですか?」
「最高の気分ですよ。久しぶりにあなたに会えたので」
堅苦しい会話を展開する私たちに蘭さんが割って入る
「えっと…お二人のご関係は…?」
「…申し遅れました。姓は諸伏、名は高明、字はコウメイ。諸伏Aの兄です」
「……妹です」
ひんやりとした展示室に毛利探偵御一行の叫び声が響く
それも気にせず、兄の姿を盗み見る
…何年ぶりだろう?
前より貫禄がある気がする
…何より元気そうでよかった…
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紅 - 面白いです!頑張って下さい。応援しています。後、いきなり、すいません。m(_ _)m (8月23日 12時) (レス) @page43 id: 2876b83137 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆな(プロフ) - 初めまして!素敵な作品をありがとうございます。これからも頑張ってください👊🏻💗 (2022年5月12日 17時) (レス) id: 676d8245fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめもやし | 作成日時:2022年4月12日 20時