おねえちゃんだから. (ページ16)

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#16 ページ16

そのまま部屋へと真っ直ぐ向かった

背後のウタが何かを言ってるみたいだったけれど、その声さえも私にはぼやけて聞こえた

部屋に着くとしんと静まり返り、静寂だけが広がる

神様の偶然なのか。それともわざとなのか

私の部屋には日が差し込まず、暗くなっていた

そんな静けさと埃の香りに安堵した

私は部屋に入り、そのまま崩れた

「っ……………」

右手で口を覆った
胃から込み上げてくる何かが
出てきてしまいそうで

苦しい。苦しい。苦しい

苦しくて息が出来ない

どうして。こんなにも

痛くて痛くて苦しくて

辛くて

『痛いよ』『苦しいよ』『辛いよ』

でも言えない。言えないよ

だってみんなが困るから

きっと『どうしろと？』ってなるから

みんなはウタを守る。小さくて可愛いから

妹だから

大きくなった私はもう、守ってもらえない

自分のことは自分で守っていかなきゃいけない

それが例えこれからずっと続いていくことかもしれなくても

「…ぁ………?」

あれ。あれ…?

おかしいな…

生暖かいものが頬を伝って床に落ちてゆく

もう決めたのに。泣かないって

だけど。でも

“今日だけ泣くことを許してくれますか？”

もうこれを最後にするから。これが最後になるようにするから

ずっと。ずっとずっとずっと

溜め込まれていた涙は溢れかえった

「ぅ……うっ……っ…」

私の嗚咽だけが静まり返る部屋に響いていた

もう私は“わたし”を捨てる

私を守るために。私はわたしを消す

そうすればもう痛くならないよね?

苦しくならないよね?

もう傷つかないよね?

もう、泣かずに済むよね?

だから

これからは『ウタのおねえちゃん』として

ただそこに在るだけでいよう

そうすれば。良いおねえちゃんでいれば

シャンクスだって『おねえちゃん』って褒めてくれる

ベックマンさんも。ヤソップさんも。ルゥさんも。ホンゴウさんも。ガブさんも。ジュースさんも。スネイクさんも。パンチさんも

みんな、みんな、みんな

またおねえちゃん(わたし)に笑ってくれるよね(かな)…？