おねえちゃんだから. (ページ11)

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#11 ページ11

「シャンクス……わたし………」

『痛いよ』とウタはシャンクスに抱きつき、泣いていた
頬は赤く腫れていてた

なんてことをしてしまったんだ。私は

シャンクスはウタの頭を撫でながらこちらにゆっくりと振り向く
彼が私の方を向くギリギリで私は視線を床へ落とした

シャンクスの目を見るのが、怖い

「何があったんだ?ララ」

「…私……あのね…………」

言葉が上手く出てこない。なんて言えばいいの
“違う”と言いたい
けれどウタを叩いてしまったのは事実だ
どんな理由があるにせよ、暴力は良くない
わかってる。わかってるのよ。だけど

だけど“あれ”だけは譲れなかったの

「なんでウタを叩いたんだ?ララ」

「…………ぁ…………………」

思い切り鈍器で頭を殴られているような感覚に陥った
声も言葉も。何も言えない

シャンクスは“私が悪い”と見ている

声を聞いただけでわかる。怒っていることが

顔を上げれずに私はただ黙りを続けた

彼の目を見るのが恐ろしくて

きっと軽蔑している。見損なわれている

嫌だ。そんな目で見られたくない

暫く私は沈黙を続けた。それを見兼ねたのか、頭上で小さなため息が聞こえた

「…今日は大人しく寝ていろ。体調はそうすぐには良くならないからな」

呆れた声

ああ…呆れられた

シャンクス。お願い。本当は

声のない声で私はシャンクスの名を呼ぶ
だけど音無き声は彼の耳には届かない

シャンクスはウタを抱き抱えて部屋を後にした

『待って』

扉に向けて手を伸ばした
だが虚しくも空中を裂くだけだった

「っ………!」

そのままベッドに顔を埋めた
だってあれは。あれは……!!

いつの日かの思い出が脳裏に浮かび上がった

『お前の髪と瞳は黒曜石のように綺麗だな、ララ』

『コクヨウセキ?』

『黒くて美しい石でな…とても綺麗なんだ。今度見せてやる』

『ふぅん…』

『ああそうだ。これをやるよ』

シャンクスの掌に乗せられていた、薄い桜貝の髪留め
ワノ国で見たという桜をイメージして作られているという
とても綺麗で、あの時の何とも言えない気持ちは未だに忘れない

『お前の髪に映えると思ってな。付けてみてくれ』

『…………こうかな?』

髪に止めたそれを見てシャンクスは嬉しそうに笑ってくれた

『思った通りだ！似合うぞ！』

『私もこれ凄く好き…ありがとう……シャンクス！』

あの人が一番最初に私にくれたの

なのに

「…ぅ………ッ!!」

ベッドのシーツを握りしめ、私は声を殺して泣いた