おねえちゃんだから. (ページ13)

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#13 ページ13

「……………………いいよ」

「！…ララ?」

「髪留め、付けていいよ。ウタ」

「！……いいの…?」

酷く歪んだ。何かが

丸かった何かが。変形してゆく

喉に巻き付くような絡まる何か

言い表せない黒く濁った様なそれが

私の中で、溢れかえるのを感じた

「うん。ほら、おいで?」

サイドテーブルから取り出した髪留めをウタに手渡した

ウタはそれを嬉しそうに受け取る

ああ。そうか。そうか

そういうことだよ
なんで今まで気づかなかったのかな

『私が諦めればいいだけのことだった』

「…なぁ、ララ」

シャンクスは驚いた顔で私のことを見る

なんでそんな顔をするの?

シャンクスもウタも、誰も傷つかない。怒らなくていい。泣かなくていい

優しく微笑み(わらい)ながら、私はシャンクスに言った

「シャンクス。私昨日のこと…後悔してた」

「…………………」

「本当は具合が悪くてちょっとイライラしてたの。だからウタに当たっちゃったんだ…良くないよね、“おねえちゃん”なのに」

ウタの方を見れば、不安そうに私の顔を見上げている

「ウタ、ごめんね。昨日は。痛かったよね…」

そっとウタの頬を触る
ウタは少しビクリと反応をしたが、やがて目いっぱいにじわりじわりと涙が溢れる

「わだじも゛！！ごめ゛んね゛…！！！」

泣き出したウタは私にしがみついた

そんなウタの頭を優しく撫でた

「私こそ、ごめんね」

ウタはわんわんと泣き、ぎゅうっと私の服を強く握った

「……そうだ。ウタ。お詫びの印に、髪留め……“あげるよ”」

「…え………?」

「！…おい、ララ…」

「いいの!?ララ！」

「何言ってんだウタ！それはダメに決まって…」

「“いいよ”。ウタ」

シャンクスの言葉を遮り、私はウタに髪留めを渡した

「待て、ララ…それは…」

「ありがとうララ！」

「いいのよ、ウタ。これぐらい、大したことないよ。だって………私は“おねえちゃんだから”」

もう『いいよ』シャンクス

私はもう“良い”の

何も求めない。望まない

諦めればいいの

譲り合いが大事だって、前に言ってくれたよね

だから譲るの。与えるの

私はウタの『おねえちゃん』だから

おねえちゃんは妹の為に、与えてあげなきゃ

妹の為に、しっかりしなきゃ

だから。私

もう泣かない。怒らない

みんなに迷惑をかけないようにする

そうすれば

いつも通りの日常に戻れるでしょ…?

だから

もう叱らないで