―失声症― ―にのあい―part９ (ページ8)

今日:12 hit、昨日:1 hit、合計:239,760 hit

■―２４８―　ページ8

.

.

.

.

この日も朝早くに目が覚めた

今日は休日だから、みんなそんなに早く起きてこない

.

雅(母さんがいなくなってから

……もう、何日経つんだろう……)

.

サラダを作ろうと、冷蔵庫からキャベツやトマトを取り出した

.

.

母さんがいなくなってから

何年も経ったみたいに感じる……。毎日がモノクロ

.

.

.

雅(痛っ……)

.

キャベツを切ってたら

包丁で指が切れた

ザックリ切れた左手の人差し指

.

ジワジワっと血が出てきた。真っ赤な色の……

ポタっとまな板の上に血が垂れた

.

.

あぁ、血が出てる

ポタポタ垂れてる

.

この血を見て思った

.

もしこのまま出血し続けて

体から血がなくなったら、母さんの所に……逝けるのになぁ

.

.

右手で包丁を握り締めて

左手をそっと胸に当てた

心臓は……だいたいこの辺り

.

この辺りを包丁で刺したら、きっと一瞬で……

.

.

.

いや

どうせ刺すならば

胸じゃなくて、喉かな

.

包丁の刃先を、喉に当てた

.

声を発せない

こんな役立たずの喉は……いらないもん

.

.

.

雅「……」

.

グッと包丁を握る手に力を入れた

.

.

.

.

智「あ…雅紀くん、今日も早いね」

雅「……！」

.

背後から大野さんの声がして

ビックリして、カランと音を立てて包丁が床に落ちた

.

.

智「ごめんね？

急に声かけたから……ビックリしたよね…」

雅「……」

智「僕も朝ご飯作るの…手伝っていい？

ってか、一緒に作ろうよ」

雅「……」

.

ニコッと笑って、大野さんは俺の足元に転がる包丁を拾った

.

.

もし

大野さんが来なかったら、俺はあのまま――――…

.

.

.

.

智「……雅紀くん？」

雅「……」

.

ギュッと、大野さんの服の裾を掴んだ

とんでもない事をしようとした自分が

少し怖く感じた

.

.

自分がどんどん壊れていく…………

.

.

.