私立魔法学園inバトルロワイヤル (ページ46)

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三十六話byシアレページ46

「あんたって優しくなったよね」

目の前でいきなりそんな事を言われ、パスタを巻きつけたフォークの動きを止める。
頬杖をつきながらそう言った彼女を見れば、彼女は表情を少しも変えずに私を見つめた。

「…ああ？」

「ん？あたし、なんか変な事言ってる？」

いやいや、変もなにも、変すぎるだろ。
正面に腰掛ける友達にそんな事言われたの、生まれて初めてだっつーの。

「…なに？ケンカ売ってんの？」

「売ってないって。あんたにケンカ売るとか、軽く自殺行為じゃない。あたし、まだ死にたくないし」

「じゃあなんなのさ」

パクリ、とパスタを口に含みトマトの味を感じながら返答を待つ。
すると彼女は、考える素振りを見せながら答えた。

「なんなのさって…。ほら、あんたさ、この学校入る前は荒れてたじゃん？めちゃくちゃ。優しいのやの字もなかったよね」

「………」

「幼馴染みのあたしにさえろくに優しくなかったよね」

「やっぱ君ケンカ売ってんだろ」

大変だ。こいつの言葉に悪意しか感じない。
まあこいつは昔からこういう奴だけど。

「でもさ、あんたこの学校に入ってから変わったじゃん。友達なんか作っちゃってさ。その友達っていうのもこれまた素晴らしく強い方々だけど」

テーブルの上にあるアイスコーヒーに口をつけながら言う彼女は、私に対して皮肉を言っているのだろうか。
不機嫌と言わんばかりの表情で顔を染めあげていると、彼女はふうと一息ついて続ける。

「成長したよねぇ」

「………は？」

口をポカンと開けると、彼女はクスリと笑った。

「ほんと、成長したよ」

「…なに上から目線で言ってんだよ。殺すぞ」

空になった皿に手を合わせながら言うと、彼女はあははと再度笑った。

「あー笑った笑った。さてっと、あたしはそろそろ行こうかな。じゃあねシアレ」

「試合？」

「そっ。頑張ってくるわ～」

席を立ってのんきに言う彼女に私はジト目を向ける。

「…気をつけてね」

「はいはい。行ってきます」

そう言って彼女は私の頭をくしゃりと撫で、スタジアムに足を運んで行った。
私はと言うと、撫でられるという行為にあまり慣れていなかったので、撫でられた箇所を暫く掻きむしっていた。

この時の彼女の手の感触を、彼女の後ろ姿を、彼女の笑顔を、私は一生、忘れる事はないのだろう。

「私、まだ君に優しくしてないってのにさ」

「勝手に死んでんじゃねぇよ、バァカ」

ーーー
今回の話に全く関係ないシアレさん画像なり