５ ページ39
今日は一番楽しいデートにするねん。
最後やから・・・
神戸の街をたくさん歩いて、
二人ではしゃいで、いっばい笑った。
秋の日暮れは早い。
少しずつ翳り始めた。
そろそろバンドの出番が回ってくるから、
もう、のんとは別れなあかん。
神大の正門前まで、
のんが送ってくれて。
別れはここで言おうって決める。
「のん、俺な、俺・・・」
言いかけた俺に被せるように。
「神山先輩、俺と別れて下さい」
のんの方から先に切り出されてしもた。
「のん・・・」
「言われる前に言うちゃいました。
先輩から別れ告げられたら、
俺、もう再起不能なって立ち上がれませんもん」
「ごめんな・・・」
「神山先輩の事、一目惚れやったんすよ。
入学してすぐの時、見かけて。
そんで、仲良なろうって必死で。
付き纏ったりして。
下心たっぷりやったんす。
引くでしょ？」
無理に明るく笑うから、
余計に苦しい。
「のんが好きになってくれた事。
ほんまに嬉しかったよ。
好きになりたかった。
のんに会えて嬉しかったし、
今も大切な後輩やって思ってる。
別れかって、
俺から言わなあかんかったのに。
のんに言わせて。
ほんまにごめん。
いっぱい傷付けて・・・」
「それ以上に楽しかったし、
嬉しい思い出ももらいました。
ちょっとは俺にぐらっと来た瞬間ありました？」
強がった笑顔の望が、愛おしい。
恋とは違うけど・・・
「あったよ。
何回もあったに決まってるやん。
のんは俺にとって特別な存在やで。
ほんまに楽しかった。
のんの彼女になれて良かった。
ずっと忘れへんよ。
ありがとう」
「ありがとうございます。
もうそんだけで十分です」
俺の肩を、望の大きい手が包む。
不意打ちにキスされたけど、
嫌やとか思わへんかった。
「じゃあ、代役彼氏はこれにて期間満了ですので。
本物の彼氏にお返しします」
のんの言うてる意味が分からへんかって。
ん？って思った時。
のんが、俺の身体、反対向けさせて、
背中、押してきた。
とんって、軽く押し出された先に・・・
見覚えある赤いスニーカーの爪先。
「とも。
出番やで。行こう」
その声に導かれるように顔を上げたら、
夕陽を連れて、きらきら眩しい、
大毅の笑顔があった。
「うん」
差し出された手。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 447人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りっつ(プロフ) - 久しぶりに読んで胸がふるふるしてます。あの、もしよかったら、修くんに緑ちゃんとの初恋を話してきかせる赤くんの場面を読みたいです。お時間あるときに是非書いてください！お願いします！ (2021年5月29日 9時) (
レス) id: d038e49da9 (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - ロスすぎるううううう！！！！！！マジで泣いた (2021年2月8日 0時) (レス) id: d9b566665e (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - 完結おめでとうございます！本当に大好きな作品でした。桃さんや真琴ちゃん美桜ちゃんの気持ちを考えるとただただ切ないですが、それと同時に赤緑が結ばれたのはまさに運命と思わされます。何度も読み返させていただきます。お疲れ様でした！ (2021年2月5日 20時) (レス) id: c2197c2c66 (このIDを非表示/違反報告)
ジャスミン黄橙(プロフ) - 最初っからドキドキが止まりませんでした！！完結おめでとうございます！！ (2021年2月5日 19時) (レス) id: 0cd046be96 (このIDを非表示/違反報告)
ミウ(プロフ) - 完結おめでとうございます！2人がやっと結ばれてすごく嬉しい気持ちでいっぱいですが、終わってしまうのが寂しいです…(><)続きのお話も読んでみたいな、と…。本当に素敵なお話をありがとうございました！！ (2021年2月5日 0時) (レス) id: 118c412c42 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：fool
| 作成日時：2021年1月31日 19時
