シルエット３

伝えたい言葉。１ ページ35

緑side


まさか大毅が大学にまで会いに来ると思わへんかった。

チャリの二人乗りして帰ろ、

言われて。


高校時代に戻ったような感覚して。

嬉しいてさ。


俺、もうちょっとで、のんを裏切るとこやった。


大毅のキス受け入れてしもた時点で、
もう十分、裏切ってるよな・・・


こんなに大切にしてくれてんのに・・・


申し訳ない気持ちと、
好きになりたいって焦りが、
交互に襲ってくる。







バイト終わって外に出たら、
のんが待っててくれる。


付き合い始めてから、
のんも俺のバイト先の近くでバイト始めてさ。


俺のシフトに合わせて、
自分のバイト、少し早めに終わるようにしてるねんて。

ここまで愛されてるヤツ、
なかなか見かけへんやろ。


それが分かってるから、苦しい。


「夜はさすがに冷えるようなったなあ。
智洋、寒いやろ？」


手を繋がれて、
のんのジャケットのポケットに入れられた。


これ、憧れやってんな。

女の子とはした事あるねんけどさ。


違って、
反対に手を取られて、
彼氏のポケットに俺の手、仕舞って欲しい。


頭に浮かぶのは、
照れくさそうな大毅の横顔。

見上げんでも、視線の合う・・・

大毅がそんな男前な事、するわけないか。


カッコつけか！
蕁麻疹出るわ！

言いそうやな。


・・・あかん。

のんとおるのに、
また大毅の事ばっかり。







行きつけのバーのカウンター席。


甘いカクテルを頼む。

俺、弱いから、お酒一杯で酔うてまうねんな。


「またほっぺた赤して。
すぐに酔うて、智洋は可愛いな」


「からかわんとってや。
これでも先輩やで」


「年上に思われへん」


でっかい手のひらで、頭、撫でられる。


好きな人に、大毅にされたら、

きゅんてして、
息止まりそうなんのにな。

ほっとするだけ。


この前、
神大の中庭で、
大毅と何があったんか、

のん、聞いてこおへんねん。

今日、大毅が大学ん前で待ち伏せしてた事も。


なんも触れへん事が、
余計に気にしてるように思えて。


自分から言うのも、
言い訳してるみたいやし・・・


もう夜の２２時前。

そろそろ帰らんとな。


ばあちゃんに、


「最近、寝る前にともの顔見てへんな。
寂しいわ」


言われてんな。

もう帰ろかな、て、考えてた時。


「なあ、智洋。
今日は、泊まりたいねんけど、ええ？」

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