シルエット３

２ ページ30

「俺かって、そんな事ぐらい知ってる。
今まで俺も無理に誰か好きになろうって、
何回もしてきてん。
けど無理やって。
大毅が胸ん真ん中に居座って邪魔するから。
大毅はずるいねん・・・」


喧嘩口調やけど、
さっきから言うてんのは、

俺を好きって事だけやん。

そうやろ？


「全部、俺が悪いから。
とも、俺んとこおいで？
な？」


真っ白な頬を手のひらで包んで、
俺から背けさせへんように、じっと見つめる。


気持ちがもうはぐれへんように。


「それは出来へん。
俺はのんと付き合うて決めてんから」


「なんで？
なんでなん？
分からへん。
ともの目、俺の事、好きや言うてるやん」


「大毅のあほ」


甘えた声して。

昔みたいや。


人前におる時のともは、
どっちか言うたら、
男っぽく、熱いヤツやねん。


まあ、そんでも、可愛いは、
随所に溢れてるわけやねんけど。


二人になると、途端に甘えたさんになって、
もう可愛いの大洪水起こる。


「あほでええよ」


呟いてから、
頭の後ろ、包み込んで、俺の方に引き寄せる。


ちっちゃい唇に、自分のそれ、合わせた瞬間。

ピオーネの香りが鼻先を掠めた。


キスって、こんなに甘かったっけ。


優しくて、それやのに、切なくて。


どろどろに溶かされて、

何も難しい事なんか、
考えられへんなる。


中毒になるような・・・


そんなキスをくれるんは、ともだけ。


「・・・ともが好き。
俺ともう一回やり直して下さい。
今度は傷付けへんし、
離せへんから」


俺の気持ち、頑ななともに届け。

願いも虚しく。


「・・・出来へん。
出来へんよ。
大毅とは付き合われへん。
俺、練習戻るから」


俺の事、突き飛ばして、
とも、駆け出して行ってしもた。


慌てて立ち上がって追いかけた先。

そこに立ち塞がってたんは、小瀧。


「のん！」


ともが迷いなく小瀧の腕の中に飛び込んでく。


「智洋、どうしたん？
人前で珍しいな」


「なんか、甘えたい気分やってん」


「もお、智洋、可愛い過ぎるやろ」


手を繋いで歩き出す二人。


確かに、ともの心に触れられた、実感したのに。

必死で俺を求めてた。


それやのに、なんで・・・？


俺も戻らな。

逃げるわけにいかへんし。


修に、何もかも打ち明けてしまおう。

軽蔑されても仕方ないよな。

自分が蒔いた種やねんから。

３→←キミの真実。１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す