シルエット３

キミの真実。１ ページ29

赤side


とも、予想もしてなかったんか、
突然現れたピオーネにぽかんとしてるから。


「召し上がれ」


言うて、一粒、千切って渡したった。


「美味しい・・・
この味や。
俺が探し求めてたん。
幻の味やってん」


めっちゃ幸せそうな顔してる。

ぱくぱく、もう止まらへんし。


「ほんまに美味しい。
幸せや」


「ともが嬉しいと、俺も嬉しい」


「大毅ありがとうな。
あ、今のは違って・・・
しげ」


俺の名前、呼んでもうてから、
とも、バツが悪そうな顔してる。

さっきも呼んでたのに、
無意識やってんやろな。


「大毅でええやん」


美桜ちゃんに大毅って呼んでいいか聞かれたけど、
断ってん。

それは、ともだけの呼び方やから。


「ううん。
やっぱあかん。
しげ、ごめんな」


逸らせたともの瞳が潤んで見える。

泣かせたないから。


「謝らんでええよ」


パーカーの背中に腕回して。


包み込むように抱きしめてた。

俺の知ってるともとは、
違う匂いがする。


香水やろうけど、
別のもの。


これ、小瀧の服なんかな。

やけにダボついてるし。


おしゃれとはまた違って、
単純にサイズがデカい気ぃする。


こんな嫉妬してばっかりで苦しい。

その想いは簡単に胸の容量超えて、
溢れ出してしもた。


「とも。
俺、今でも、ともが好きや」


あんなに悩んでたのが嘘みたいに。

自然に声になっててん・・・


「しげ。
やめてや。
あかん」


口ではそう言うけどさ。

申し訳程度に俺の胸を押す手には、
力なんか入ってへん。


「嫌や。
こうしてたい」


「友達やのに困る。
離してや」


「嫌や言うてるやん。
とももほんまは嫌とちゃうやろ？」


本気の拒絶やない事ぐらい、
いくら鈍感な俺にでも分かる。


「・・・あかんねん。大毅。
あかんから・・・」


「小瀧に惚れてもうたん？」


「のんのこと、好きになりたいねん。
好きになれると思う」


「とも。
俺な、好きになる努力、めっちゃしたんよ。
でも好きになるんて、
頑張るとかちゃうねんな。
気付いたらもう、
好きの底なし沼に落ちてるいうか。
そんな相手、今までの人生で、
俺はともだけやった」

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