シルエット３

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「可愛いないし」


「もー、そういうとこがたまらんねんて」


のん、
付き合うってなった日から、
急に敬語はやめた。

そんで、彼氏感、めっちゃ出してくる。


俺は、今までとの落差に戸惑ってばっかり。


「今日は映画でも見よか。
先輩、見たいのんある、言うてたやん？」


「うん」


俺の言うた事は全部、覚えててくれるしさ。

申し分ない、

いうか、

ほんま、最高の彼氏なんやと思う。


それやのに・・・


俺の心ん中、占拠してんのは、

いつまでも、大毅の笑顔。




大丈夫や言うてんのに、
のんは、毎日、
マンションの部屋の前まで送ってくれる。


ばあちゃんはもう寝てるみたいで、
電気は消えてる。


ひっそりした廊下。


「ありがとうな。
のん、遠いねんから気をつけて帰り」


俺はいまだ先輩っぽい話し方してまうねんけど・・・


のんは不服そうに、少し苦笑いした。


「俺は大丈夫や。
なあ、とも？」


不意に、とも、って呼ばれて、
嫌やな、思ってしまった。


それは、家族以外は、大毅だけの呼び方で・・・


「ごめん。
ともより智洋のがええかも」


つい、言うてた。


のん、勘ええ方やのに。


ちょっと苦しそうに、唇、歪める。


俺を見下ろす瞳が揺れて・・・


不意におっきな身体、屈めた。


え・・・？


びっくりしてるうちに、重なった唇。


はっとした時には、一旦離れたのに。


「びっくりした顔も可愛い」


のんの甘ったるい囁きが聞こえて、
またすぐに重なった。


やめてや。

俺、全然、心の準備出来てないし。


違う、こんなん、嫌や。


大毅のキス、どんなんやったかな。

もう記憶が朧げで、
忘れてまいそうやねん。


覚えてたいのに・・・


広い胸押して、顔背けて、必死で逃げてもうた。


「ごめん。
怖かった？」


優しく聞かれる。


「怖くはないけど。
急過ぎる」


「ごめんて。
先輩があんまり可愛いから」


嘘や。

のん、
慣れた感じの、
余裕のあるふりしてるけど、
嫉妬した顔してる。


それは全部、俺のせい。


ちゃんと望と向き合ってくって決めたのに。


「俺こそ、ごめんな。
あんな、なんか、ジタバタして」


「ううん。
めっちゃ可愛いかったから。
嬉しい」

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