シルエット３

５ ページ15

「・・・ありがとう。
のんの気持ち、嬉しいよ？」


「お礼なんかいらんから・・・
こんな辛そうな神山先輩は見てられません。
俺、今、もう付き合うって決めました」


「ちょ、待ってや」


「待てません。
たった今から、神山先輩は俺の彼女です」


「のん、困るって。
俺、今、最大に弱ってるねん。
弱ってるから。
そんなん言われると、
寄りかかりたなるから・・・」


「なんも困りません。
寄りかかったらいいやないですか。
そんな真面目やなくても、
もっとズルくていいんです。
俺、彼女の事は、
めっちゃ甘やかしますから。
先輩はただ隣で笑ってくれてるだけでええから」


のん、こんな優しい顔で笑うねんな。


そんな言われたら。

泣きたなるやんか・・・


「いきなし、恋人って感じは無理かもやけど・・・
のん、俺の隣におって下さい」


こんでええんよな？

なあ、大毅？

そやんな？


もういい加減、前に進まな。


大毅はとっくに先歩いてってるねんから。



「やった！よし！やっば！」


のん、一人でひとしきりガッツポーズして。


「俺、今、人生最高に嬉しいっす！」


それから、急に抱きしめてきた。


ほんまにでっかくて、
俺なんかすっぽり包まれてまう。

首筋の甘い香水の匂い。


・・・大毅とは違う。


また比べてる。


忘れるって決めてん。


もう振り返らへん・・・









練習場になってる、
音大のスタジオに入った途端。

既に集まってたみんなに向かって。

のんが、


「俺ら、付き合う事になりました。
男同士やけど、そこは敢えてスルーでお願いします」


いきなり宣言してしもてん。


みんな、一瞬、ぽかーんとなったけど。


「良かったやん！小瀧！
きしょいぐらい片想いしてたもんな」


部長の言葉を皮切りに、


「今時別に珍しもないよな」


「おめっとうさん」


「二人ともイケメンで女の子選びたい放題やのに、
ほんまもったいない事するなあ」


「ええやん、二人が幸せなら」


サークルのメンバーみんなに祝福されたけど・・・


大毅の方、見られへん。


あの満面の笑顔で、
笑窪見せながら、

おめでとう！言われたら、

辛過ぎるし。


俺、往生際悪いよな。


のんのこと好きになろう。

絶対に。

努力するねん。

６→←４

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す