シルエット

白日。１ ページ49

緑side


修学旅行の夜から、
俺らの心は前よりもっと深く繋がるようになった。


冬休みに入って、

冬期講習のために、
また西宮のばあちゃんちに行くことなって。


大毅も一緒がええって頼み込んだけど、
大毅のお父さんに大反対されて、無理やった。


あんな賢いのに、
なんで、大学行ったらあかんとか言うねやろ。


俺には、ほんまに分からへん。


親が、狭い価値観で、
子供の足引っ張ってどうするねん、


大毅のおとんに会う度、

言うてやりたいとこ、

ぐっと堪えてる。


けど、二人おる大毅の姉ちゃんのうち、
一人は賛成して味方してくれてるねんて。

参考書買うお小遣いくれたりな。

それはめっちゃ心強いねん。








年が明けて、２００６年１月６日。

俺は島に帰って来た。


今日は神社で、
餅つきがあるねんて。

今年は大毅の家が自治会の役員で、
大毅も借り出されて忙しい言うてたから、

行く気なかってんけど。


康二に、

大毅が袴着るて聞いて、

やっぱり行くことにした。


康二は大毅の幼馴染で、
唯一、俺に嫌がらせしてこおへんかったヤツ。

だんだん仲良なって、
最近は３人で過ごすことも多いねん。
　

いわゆる普通の男友達との付き合いって、
島では初めてやし、
康二とおるんは結構楽しいねんけど、

大毅がやきもち妬くねんな。


けど、それも嬉しかったりする。


康二には付き合うてることは内緒やから、
３人でおる時は素知らぬ顔してるくせに。

二人になると、
めっちゃ嫉妬心出してくるねん。


その度、きゅんてなるから、
もっと妬かせてまえって思てる俺、
悪いよなあ。


神社の鳥居の前で、康二と待ち合わせて、
階段、上がってく。


境内には、

臼と杵、

それに、炊き立てのもち米が用意されてあった。


晴れ着の女の子たちも何人かおる中で。


一際目を惹くんは、
白の羽織着た、袴姿の大毅。


俺の彼氏、めっちゃカッコええ。

思わず見惚れてまう。


俺に気付いた大毅が、
軽く目配せするから。

胸がきゅってなった。


あんな事して、
康二にばれてへんかって不安になる。

あとで怒らなあかん。


大毅が、杵を持って、餅つきを始めた。

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