シルエット

３ ページ39

なんでこんな、
いじめられっ子みたいな扱い受けなあかんねやろ。


子供ん頃から、いじめられた事なんかないのに。


時々、何もかも、嫌んなる。


俺がおるはずの普通の世界に帰りたいけど、

ここには大毅がおるから戻られへん。


今の俺には、それだけ。


俺にアタッカーの番が回ってきた。


ネット越しに、

相手チームの調子乗ってるヤツらを、

冷めた目で睨みつける。


「ピアス男、舌打ちしよったで」


「やったろ」


「手加減すんなや」


なんや言うてるわ。


大毅が、


「お前ら、ええ加減にせえや」


言いかけたから。


あかんって思った。


咄嗟に遮ろうとして。


「だっさい田舎もんがギャーギャーうっさいねん。
大勢やないと、なんもよう言わんねやろが。
俺に文句あるんなら、一人ずつ言うてこいや」


そう吐き捨てるように言うてた。


向こうのコートでは、
言い返す言葉も思いつかへんらしいて、

うーって唸り声上げてたり、
唾吐いてるヤツまでおる。


「きったな」


呟いた時に、ホイッスルが鳴った。


ボールが俺めがけて一直線に飛んでくる。

なんでか一個やなくて二つも三つも。


観客やコートの中の味方からも、
投げつけられてんねやって、
案外、冷静に考えてる。


頭庇った腕にボールがぶつかった。

足にも。


「痛っ・・・」


その場に蹲った時。


「ともっ」


俺を呼ぶ、大毅の声が聞こえた。


駆けつけて来て、
俺を庇うように、
両腕広げて、立ち塞がってくれてる。


「お前ら、ええ加減にしろや。
一人相手に卑怯やろ」


「しげ、どけや。
これはバレーや」


「あほか。
味方にボール投げつけるなんか聞いたことないわ」


「なんやねん、しげ。
ほんまにこいつに洗脳されてんちゃうん？」


みんなが大毅を責め始める。

それだけは、嫌や。


「大毅、ええって。
俺、別に平気やし」


立ち上がろうとしたけど、
血が出てる膝が痛くて、無理やって。

何回か、転ばされたからなあって。

また冷静に思ってたけど、
大毅の方が、めっちゃ慌ててるねん。


「あざなってるやん！
血も出てる！
とも、保健室行こ」


「大丈夫やって」

４→←２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す