シルエット

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俺が来たことは、
うちの親には内緒にして下さいって。

神ちゃんのお母さんに頼み込んでから。


船着場に停まってた船に乗り込んだ。


すぐに帰って来るから大丈夫や。


家族はみんな朝はよから市場に出荷に行ったし、

顧問の濱ちゃんには、
お腹痛いって言うといてって、

この村で一番気の合う、
康二に頼んできたし。


俺の計画に、抜かりはないはず。









船降りた途端に、
めっちゃビビってもうて、足がすくんだ。


目の前に、テレビでしか見たことない世界が広がってたから。


ビル、車、人、自転車が、
息苦しい程、ひしめき合うてる。


神ちゃんは、こんなとこからやって来たん？

まるで異次元。


なんとか駅まで辿り着いたけど、


電車の乗り方なんか知らんし、
途方に暮れる。

電車って、いろんな線があって、
それぞれ別んとこに向かってるらしい。

初めて知った。


神ちゃんのお母さんからもらったメモを頼りに、
電車に乗る。


「多分、昼間は予備校に行ってると思うから」


言うて、
その予備校までの行き方を細かく書いてくれてん。


神ちゃん、大学に行くんは、ふつー言うてたもんな。

勉強好きやなさそうやのに、不思議やけど。


阪急電車とやらには、
ドアが開く度に、
立ってられへんほどの人が押し寄せて来る。

こんな沢山の人間、俺、見たんは初めてや。


中学の修学旅行で行った広島でも、
こんなにおらんかったし。


駅から5分のとこにある、
でっかいビルが予備校いう塾らしい。

そこでしばらく待ってたら、
神ちゃんが出て来てくれたけど・・・

やっぱし、今日もりゅーせーと一緒。


思わず隣のビルの影に隠れてしもた。


りゅーせーって、
見た感じ、
どう考えても悪そうやのに、
大学行くんや。

都会の人はほんまに全員行くんかもしれへん。


神ちゃん、髪の毛、切ってんや。

りゅーせーとお揃いの金髪になってる。

金髪なんか、ヤンキーの髪型や思てたけど、
神ちゃんがすると、
めっちゃおしゃれに見える。


「神ちゃん、今日、どうする？
ゲーセン寄ってく？」


りゅーせーは、いつも、
気だるそうな話し方する。


「せやな。
久々に服見たいわ」

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