ドミノ『山内亜紀』 ページ1
「うわっ、お化け屋敷だ」
失礼だと分かってて、それでも言ってしまった。
言い訳するみたいだけど、ほんとにお化け屋敷だから。
ボロボロのレンガの壁でしょ、ツタが絡み放題の煙突でしょ、それに、店の中は真っ暗だし。
…ほんとに、ここで合ってるのかな。
私は、リュックから地図と手紙を取り出した。
『亜紀ちゃんへ
こんにちは〜!
初めましてだね!
おばさん、夏休みにフロリダに行くことになったのよ。フロリダってわかる?ディズニーのある所!
それで、神住っていう所にある私のドールショップの店番を、ぜひぜひ亜紀ちゃんに…』
ぐしゃっ。
読みかけの手紙をポケットに押し込んだ。
代わりに、ポケットから鍵を取り出す。お化け屋敷…じゃなくて、ドールショップの鍵だ。
この「おばさん」と名乗る親戚には、実は直線会った事はない。ないのに、見ず知らずの私に店番を任せてきた。
店名は…英語かな?読めない。
ホコリを落として、ドアノブに手をかけた。
行くのか私?!
でも、行かないとでしょ。
なんか怪しくない?!
いやいやいや…
「ええい!行っちゃえ!」
思い切ってドアを開けた。
「お邪魔しま…うっ!」
ほこりっぽい空気。思わずむせた。苦しい。
「何ここ…」
中は真っ暗で、ほとんど何も見えない。
特大ダンボールが並んで、ドールショップというよりは倉庫みたい。
「…で、電気つけなきゃ」
スイッチはどこだろ。壁に手をついて歩く。
「どわぁ!」
何かに当たった。鼻が痛い。
それはどうやらダンボールだったようで、ゆっくりと向こう側に倒れる。
「うわわ、やばいやばいやばい」
ダンボールはドミノの要領で、次のダンボールを倒す。そのダンボールが次のダンボール、また次のダンボール…。
「ひゃー!」
ばたーんと音がして、ダンボールが倒れた。はずみで電気がつく。
「痛い痛い…よいしょ」
私じゃない、誰かの声がした。
「…へ?」
箱が開き、ドレスを着た女の子が這い出してくる。
その子はきょろきょろと見回すと、安心したように微笑んだ。
「よかった…どこも壊れてない」
暗闇に溶けるドレス、綺麗な髪。こっちに気付いて見開く、真っ赤な瞳。
呆然としてしゃがみ込む私に、その子は微笑みかけた。
「ボクはアリス・ブラックウェル。この店のドール。よろしくね…♪」
アリスなんとかと名乗ったその子は、驚いた事に、話す等身大ドールだった。
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*:えすぷれっそ:*(プロフ) - 更新させて頂きます! (2017年3月9日 20時) (レス) id: db60ba2890 (このIDを非表示/違反報告)
ネムム(プロフ) - はる櫻さん» ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。 (2017年2月17日 6時) (レス) id: 2bd2d16489 (このIDを非表示/違反報告)
はる櫻(プロフ) - 更新終了しました! (2017年2月16日 23時) (レス) id: 1e40ca4b4e (このIDを非表示/違反報告)
ネムム(プロフ) - みやこさん» 返信が無かったため、今回の更新は延期とします。このコメントに気付いて返信してくださったら、その次の更新をお願いしたいです。勝手に判断して申し訳ありません。 (2017年2月1日 17時) (レス) id: 2bd2d16489 (このIDを非表示/違反報告)
ネムム(プロフ) - みやこさん» わかりました。いつ頃更新出来そうでしょうか? (2017年1月22日 18時) (レス) id: 2bd2d16489 (このIDを非表示/違反報告)
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