弱虫姫奮闘記―癒しの姫君【弱虫ペダル】【第８期】

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東堂さんは私の頬をくすぐるように指先で撫でて、『何かあったら連絡するのだぞ』と携帯を指してから出て行った。


シンと静まり返ったお部屋で煎茶と温泉饅頭を頂きながら、さっき東堂さんが指差した自分の携帯から目が離せずにいる。

総北のみんなは今も１０００キロ走破に向けて頑張っているんだよね･･･。


携帯に伸ばしかけた手を片方の手で掴んでグッと耐えた。


みんなに会いたい･･･声が聞きたい･･･けど、頑張っているみんなの邪魔だけはしちゃいけない。

みんなが頑張っているのに、私は箱学の人たちの練習にもリタイアしてしまった。


連絡を取りたいけど、こんな情けない私、見せちゃいけない。

連絡を取らないことが私への一番の精神修行なのかもしれない･･･。


総北のみんなの顔が浮かんで、涙で目が霞んでしまう。




「さみし、い･･･です･･･っ」




届くはずもない言葉が出てきて、私はまだまだ強くなれていないことに涙した。

お風呂に入って、この気持ちも洗い流せたらいいのにと思いながらお部屋のお風呂に向かった。


夜ごはんは１人では寂しいだろうからと、ママさんが食卓に呼んでくれて、東堂さんのママさん、パパさん、東堂さん、長澤さん、仲居さんと頂いた。

仲居さんや従業員の人たちは他にもいるけど、食事の時間はずらしているみたい。


お部屋に戻ると既にお布団が敷かれていて、ママさんや仲居さんたちの優しさに感謝した。


まだ眠るには早い時間、ぼんやりと携帯を片手に暗くて自分の姿しか映らない窓の外を見ていると、突然携帯から着信音が響いてびくりと体が跳ねてしまう。

画面を見ると、巻島先輩の名前が表示されていてドキリとしてしまった。


どうしよう･･･と思いつつも、無視は出来なくて通話ボタンを押す。




『･･･姫。今日はどうしてたっショ？』

「････っ」




電話口から巻島先輩の心配そうな、優しい声が聞えて息が詰まってしまった。

声を出したら、きっと情けない声が出てしまいそうで、泣き出してしまいたい気持ちを押さえ込むしか出来ない状態だった。

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