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小野田くんが手持ち花火を渡してくれて、ドキドキしながら蝋燭に翳すとパァっと花火から火花が上がる。
「わぁ・・・っ。綺麗・・・」
思わず声が出てしまうと、隣りで荒北さんが口元を綻ばせた。
でも荒北さんは手に持っている花火に火を着けずに私の花火を見ているだけで不思議に思う。
「荒北さんは花火しないのですか?綺麗ですよ?・・・あ、消えちゃいました」
「・・・まあな。ほれ」
荒北さんは、燃え尽きた私の花火を回収すると、近くのバケツに放り込んでから自分の持っていた花火のうちの1本を渡してくれる。
「え?いいんですか・・・?」
「いいって。・・・自分でやるよかお前がやってるの見てる方がいい。初めてなんだろ?」
「は、はいっ。ありがとうございますっ」
嬉しくなって笑顔でお礼を言うと、荒北さんは『おうよ』と一言。
そんな私たちのやり取りを見ていた箱学の人たちは恐ろしいものでも見てしまったような顔で固まっていた。
「靖友がデレた」
「うむ」
「デレてねーよ!!つーかコッチ見てんじゃねぇよ!」
よく分からないけど、みんなが楽しそうで嬉しい。
あっちでは鳴子くんが田所先輩の足元にネズミ花火を投げて、驚いた田所先輩に大笑いして怒られてるけど・・・。
1人で過ごすのだと思っていたGWを、みんなとこうして素敵な思い出を作れたことが嬉しい。
中学の時には考えられなかった出来事や出会い。
そして大切な人たちの優しさが私の心ふんわりと包んでぽかぽかに温めて満たしてくれる。
等身大の自分でいられるこの場所を失わないように、大切にしていきたいと思った。
私は、私の出来ることをすればいい。
どんなことになったって、頑張ったらどんな自分でも受け入れてもらえるのだから。
「荒北さん。花火、楽しいですね。素敵な思い出になりました」
「そーかよ。そりゃ良かったな」
「はいっ」
「姫ー。みんなで線香花火対決すんでー!総北vs箱学や!負けへんでー!!」
鳴子くん主催の線香花火対決は結局個人戦になって、冷静な福富さんと慎重な金城先輩が最後まで競って同時にポトリと火種が落ちた。
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瑠璃色の夢(プロフ) - ダリアさん» いつも嬉しいコメントをありがとうございます^^素敵なお言葉をたくさん頂けてモチベーションを保てています。本当に感謝感激です。今後も頑張っていきますのでよろしくお願いいたします(*^^*) (2019年8月18日 1時) (レス) id: 86b4dd6b0b (このIDを非表示/違反報告)
ダリア - これを見ると疲れが癒されます。姫ちゃん可愛すぎです! (2019年8月18日 1時) (レス) id: 7c4b8b3529 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - 美月さん» 嬉しい感想ありがとうございます♪応援と温かいお言葉、とても励みになります^^今後も頑張っていきますのでよろしくお願いいたします(*^^*) (2019年5月3日 10時) (レス) id: 86b4dd6b0b (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - はじめまして!第1期から見させてもらいました!もの凄く面白いです!過保護な自転車部員は見てて凄く楽しいです!この作品大大好きです!応援してます!! (2019年5月3日 9時) (レス) id: 001893ea4c (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - かあさん» 嬉しいコメントありがとうございます^^確かにベタですよね。ですがなかなか私好みの方向に行ってくれない終わり方の小説が多くて執筆し始めてしまいました(汗)自己満足な小説になってしまっていますが今後とも頑張りますのでお付き合いくださると嬉しいです^^ (2019年4月21日 7時) (レス) id: 86b4dd6b0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃色の夢 | 作成日時:2019年1月25日 0時