弱虫姫奮闘記―癒しの姫君【弱虫ペダル】【第５期】

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青八木先輩の腕の中で、安心出来た私は少しだけ考える力が戻ってきているらしい。



「せん、ぱ･･･。血が･･･。よごれ、ちゃ･･･」

「･･･っ。いいからっ！･･･こんな時にまで、俺の心配、しないで」



普段、無表情か微笑む顔しか見たことがなかったけれど、今の先輩は顔を歪めて、自分が怪我をしてしまったみたいに泣き出しそうな顔をしている。

私が･･･こんな顔をさせてしまっているんだ･･･。

保健室に着くと、開いていた扉から保険の先生らしき白衣を着た女の先生がこちらを驚いた顔で見てきた。



「大変･･･っ。君、早くその子連れてきて頂戴！」

「･･･はい」



私がまだまともに座れないと判断されたのか、青八木先輩はベッドに私を下ろして寝かせてくれた。

保険の先生は消毒用のワゴンを押して来て、私の怪我の様子をひと通り診て治療の準備をしながら聞いてきた。



「自転車競技部の生徒がＧＷ中に千葉の高校と合同合宿をしているのは聞いているわ。･･･その怪我、どうしたの？女の子なのに顔も腫れているじゃないの･･･。腕の怪我は擦り傷だから大したことはないけれど、頬は･･･明日以降は痣になってもっと腫れるわよ･･･？頭も打っているようだし･･･」

「･･･っ」



あんな事、言いたくない･･･恥ずかしくて、誰にも言いたくないよ･･･。


ぐっと口を引き結ぶと、その様子を見ていた青八木先輩が口を開いた。



「･･･落車です。ロード中、･･･転びました。すみません」
「そうなの･･･？でも、気をつけてちょうだい？女の子が顔に傷を作るなんていけないわ」

「はい」



治療を終えた頃には私の体の震えは収まっていて、保険医の先生は少し外すからと出て行ってしまった。

頭に包帯を巻かれているのは少しだけ後頭部からの出血があったらしい。

左頬は大きなガーゼで覆われて、腕も擦り剥いた範囲が大きい為に包帯を巻かれている。


パッと見た感じ、重傷者だ･･･。

こんな姿、先輩たちに見られたら･･･説明しなきゃいけないんだろうな･･･。

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