弱虫姫奮闘記―癒しの姫君【弱虫ペダル】【第３期】

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当たり前だけど、見渡す限りロードジャージを着ているのは男の人ばかりで、少しだけ不安が過ぎる。

当然女子更衣室は無いので、総北チームに与えられたテントを締め切って先に着替えさせてもらってから準備を始めた。


今日は初めて総北の黄色いロードジャージを着たけど、みんなと同じジャージというだけで、気持ちは高揚してドキドキする。

いつもはそのままにしている髪だけど、今日はヘルメットの邪魔にならない低い場所で２つ分けでリボンで緩く括る。

巻島先輩みたいにふわふわしながらクライム出来たらかっこいいけど、私の髪は長すぎてお尻に敷いちゃったりするから念の為だ。


レースに出ることが決まってから、ここ数日、少しだけダンシングを練習したけど、付け焼刃というやつだからどうなることやら･･･。


テントから出て、私の自転車のメンテナンスをしてくれているにいさまの隣へ行くと、周りの
人たちがザワリとした。


「おい･･･。あれ、総北のジャージじゃないか･･･」

「外人か？人形みたいだな」

「え･･･？女の子･･･？マジで？総北余裕こいてんな」

「でも総北って男子校じゃなかったっけ？」

「なんだあの子。めちゃくちゃ小せぇ」

「出るもの出てないし、実は男･･･ってことは流石にないよな･･･？」


いろんな声が聞こえてきて、顔を上げられない･･･。

怖い･･･かも･･･。


「･･･ちび姫。顔を上げて笑ってろ」

「･･･にいさま･･･？」

「こんなの余裕ですって顔してろ。お前が選んだ道は先が見えねぇ山岳道と同じだ。こんなこと頻繁に起こる。だけど、だ。お前の背中を押してくれるやつらを誇ることは出来るだろ？ほら」


親指で私の後ろを指したにいさまに釣られる形で後ろを向くと、私と同じ黄色と白の総北ジャージを着た手嶋先輩と青八木先輩と今泉くんが微笑んで立っていた。


ど、どうしよう。

かっこいい･･･っ！

私もこのチームの１人･･･仲間･･･っ！


口元が自然に緩んで、私は今日最高の笑顔で『はいっ』と返事をした。

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