１３ ページ13
「はぁ、はぁ･･･っ」
高校に入る前までの受け入れてもらえない自分を思い出して走ったのに、また頭の中に霞がかかったような感覚に陥った。
入学してからほとんど無かったけど、千葉に来る前の、あの事故の夢から何度も何度もあった感覚。
まるで自分の頭の中が掻き混ぜられるように、記憶が書き換えられるような感覚が襲ってくる。
私、あんなに辛い言葉で追い詰められていたのに、あんなにも怖いと思っていた男の子たちの脳裏に焼き付いていた顔さえぼやけて思い出せないでいる。
テントのたくさん並んでいるところまで何とか走ってきたけど、それも限界になってテントの陰に座り込んでぐるぐるする気持ち悪さをやり過ごしていると、後ろから声をかけられた。
「おい。そこのチビ。何座り込んでやがる。気持ちわりぃのかよ?それとも迷子かぁ？ってクソ･･･。そもそも日本語通じんのかよ･･･」
「･･･っ？」
顔を上げて振り返ると目つきの悪いお兄さんが腰に手を当てて、仁王立ちで私を見下ろしていた。
視界が涙でぼやけてるせいか、お兄さんの表情は見えないけど、心配してくれているのかな･･･？
きょとんと見上げていると、お兄さんは片手で綺麗な黒髪をガシガシと乱して、それから腰を落として座りこんでいる私の視線に合わせてしゃがみ込んでくれた。
同じ目線で話しかけてくれるこの人は、きっといい人なんだと思う。
「あーあー。涙で顔がグシャグシャじゃねぇか。ハンカチとか持ってねぇし･･･。ほれ、これで我慢しろや」
「ふぁ･･･っ？」
言い方は荒っぽいけど、その優しいお兄さんは自分の袖で私の涙を拭いてくれた。
黙って目を閉じて拭かれていたら、そのお兄さんが目を細めて言った。
「お前、猫みてーな奴だな。ほれ、泣きやまねぇと親捜してやんねぇぞ？」
お兄さん･･･私、ちゃんと人間で、子供じゃないです･･･。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「愛され」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にわなずな(プロフ) - 5ページ東堂が藤堂になってますね (2019年12月28日 23時) (
レス) id: d640b39bc8 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - ダリアさん» いつも嬉しいお言葉をありがとうございます＾＾励みになります。今後も頑張りますのでよろしくお願いいたします(*^^*) (2019年8月13日 21時) (レス) id: 86b4dd6b0b (このIDを非表示/違反報告)
ダリア - 姫ちゃんの頑張る姿に感動をおぼえました！ストーリーも面白かったです♪ (2019年8月13日 19時) (レス) id: 7c4b8b3529 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - Tukineさん» 嬉しい感想をありがとうございます＾＾とても励みになります。今後も頑張っていきますのでよろしくお願いいたします(*^^*) (2019年8月12日 14時) (レス) id: 86b4dd6b0b (このIDを非表示/違反報告)
Tukine(プロフ) - 姫が可愛いです。妹にしたい。皆の構いたくなる気持ちがわかります。 (2019年8月12日 0時) (レス) id: cec2b3b425 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑠璃色の夢 | 作成日時：2018年11月5日 0時
