弱虫姫奮闘記―癒しの姫君【弱虫ペダル】【第１２期】

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巻島先輩は声のトーンを少しだけ落とす。




『これは坂道の成長の為にも大事なことっショ。けど、俺は姫と約束もしてる。だから明日のレースには出ないが･･･明後日のレースには出る。だから待ってろっショ』

「え･･･？で、でもそれだと･･･」

『ああ。俺は明後日のレースは最下位でスタートっショ。しかも、どれだけ上位でゴールしようがカウントはされない。それでも、出る価値はあるっショ？』




清々しいほど明るい声が電話越しに聞こえたのか、金城先輩はフッと笑って『巻島らしいな』と呟いた。



金城先輩の表情もまた、とても清々しい。

そうか、先輩たちは、このメンバーで･･･。

インターハイを共に戦ったメンバーで走れさえすれば、順位なんて関係ないんだ。



ただ、このメンバーでもう一度ロードレースが走れれば･･･。

こういう、レースもあるんだ･･･。



涙も引っ込んで、私は先輩に拗ねたように言う。




「････だったら、先に言ってください。心配したんですから･･･」

『クク。悪い。姫は顔に出るからな。本当は明後日合流してから伝えるつもりだったっショ』

「遅いですよ･･･。もう巻島先輩なんか知りません･･･」

『クッハ。そう言うな。泣き虫姫が今度は拗ね姫になったっショ。まあ･･･泣かれるよりは･･･』

「もう･･･っ。先輩っ」

『クッハっ。冗談っショ。まあ、明後日、ちゃんと行く。待ってろ』

「･･･っ。はい･･･っ」




私は泣き笑いになりながらも、巻島先輩の言葉に返事を返して電話を切ると、金城先輩に持っていた電話を返した。

金城先輩はフッと微笑むと、抱き込んだ私から体を離して頭を撫でてくれる。




「良かったな。ふっ。巻島らしいやり方だ」

「っ。は、はいっ。でも･･･巻島先輩も一言くらい教えてくれたって･･･」

「ふっ。俺は来ることすら知らされていなかったぞ。奔放な巻島らしいが。元気が出たようだな」

「ぁ･･･。はいっ。巻島先輩と連絡取ってくださってありがとうございました」




私のお悩みを一瞬で解決してくれた金城先輩は本当に頼りになる先輩だ。



小野田くん、ちゃんと巻島先輩は来るからね。

明日のレース、気持ちを強く持って乗り越えてね。



祈るような気持ちで瞳を閉じた私に、金城先輩は優しい声で夕ごはんに促してくれた。

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