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るうは不思議に思っていました。
ただの動物ではなく獣人で、しっぽがあるのはまだ確認出来ていないのですが、耳さえなければ見た目はただの大きな人間です。
「ありゅ。なんとか、ぞくのひと、どうぶつ、なれりゅ、でしゅか?」
「え?ああ。るうは知らなかったんですね。ええ、なれますよ。僕は兎に、ジルくんは狼に。獣人である僕たちは、獣の姿と人の姿、どちらにもなれます。まあ、成人するまではその間の姿にしかなれませんが」
アルの言葉を聞いたるうは、更に瞳を輝かせました。
それに気づいたアルは、苦笑いをした後、ジルに視線を向けたのですが、ジルは混乱した顔で考えている様子でした。
この世界に生まれた時点で、誰でも本能として、誰からも教わることなくそれを理解出来ている一般常識をるうが知らなかったことにジルは混乱しています。
「ジルくん。るうに見せてあげてはいかがです?」
「は・・・?アルが見せてやればいいだろう?」
ジルがすぐに首を振ると、アルはまたもやにっこりと笑顔になってワゴンの上に並んでいる救急セットに視線を落としました。
「僕はるうの足の怪我を治療しなければいけないのですが・・・」
そう言ってピンセットと消毒薬らしき瓶を手に取って振り向いてから、ジルにもう1度視線を向けたアルは、更に笑顔で言いました。
「ジル。るうを見てみなさい」
アルの言葉にジルは腕の中のるうに視線を落とすと、少し動揺しました。
ジルの腕の中で先ほどまで嬉しそうににこにこしていたるうは、今はアルの持っているピンセットと消毒薬の瓶に釘付けになっています。
体もぴしりと固まって、ジルの胸元の服をその小さな手できゅっと握っています。
「るうは医者が嫌いで、治療や診察をされるのが大嫌いなんですよ。ですが、僕はるうの足を治療しなければいけません。となれば、幼い子が治療される時、1番効果的なあやし方は?」
「・・・あー。要するに、俺が狼の姿で嬢ちゃんの気を反らせろと・・・?」
ジルはにこにこと笑顔のアルに、諦めたように脱力しました。
「はい。ジルくん。ご名答ー。ばい菌が入るといけませんからね。とっとと変身しちゃってくださいね」
「はぁ・・・。はいはい。分かったよ。あー・・・もう」
ジルは浅くため息をつくと、ベッド上に腰をかけ、るうを膝の上に乗せると、あっという間に狼の姿になりました。
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ダリア - やはり貴方様の書く作品は迚素晴らしい物ですね!るうちゃん物凄く好きです!可愛い!登場人物は全員好きになってしまいました!! (2022年9月15日 3時) (レス) @page50 id: d57692a101 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - やほ子さん» 読んでくださっていたのですね。ありがとうございます!今は繁忙期で少し忙しくて更新が遅いですが今後もよろしくお願いします^^ (2021年3月17日 0時) (レス) id: ef139e1273 (このIDを非表示/違反報告)
やほ子(プロフ) - 瑠璃色の夢さん» なるほど!!私少し前に読んでました!リメイク版が見れるなんてうれしいです! (2021年3月16日 21時) (レス) id: d9cd79b552 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - やほ子さん» コメントありがとうございます。こちらは以前別サイトで投稿していた小説のリメイク版になります^^現在は瑠璃色の夢という名でしていますが以前は瑠璃夢という名で投稿しておりました。 (2021年3月16日 15時) (レス) id: ef139e1273 (このIDを非表示/違反報告)
やほ子(プロフ) - この小説他のサイトにも投稿してらっしゃったりしますか? (2021年3月16日 14時) (レス) id: d9cd79b552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃色の夢 | 作成日時:2020年1月29日 16時