37 ページ37
るうはジルをじっと見つめてから、少しずつ視線を上にずらしていき、その赤灰色のツンツンした頭、いえ、その頭にくっついている灰色の耳を見ました。
気のせいか、るうの瞳がキラキラと輝いている気がしたアルは、るうの視線を追ってから、そういえば自分も出会った瞬間にまず耳を見られていたなと思い出して、ふふっと笑いました。
「ジルくん。もう少しこちらへ」
「?」
ジルはアルに、傍までくるように言われると、不思議に思いながらも近づきます。
真正面までジルが来たことを確認したアルは、るうを抱く腕を少しだけ持ち上げてジルの腕にるうを抱き渡しました。
それに驚いたのはるうだけではなく、ジルも夜色の瞳を大きく見開いて固まります。
「ほら、るう。ジルくんは何の種族か分かりますか?当ててみてください」
「ふぇ?うー」
突然のアルの質問に少し驚いたるうでしたが、逞ましい腕の中で、いまだに固まっているジルの頭の上を見上げて考えました。
「・・・わんわん?」
「っっ!?」
「ぷっ。あははははっ」
犬の獣人と勘違いしたるうに『わんわん』と言われ、犬扱いされたジルは言葉が出てこず、その反応を見たアルは、とうとう噴出して爆笑してしまったのでした。
数分前まで大爆笑していたアルは、今度はふるふると震えて引き攣る腹筋の痛みと、更なる笑いの波に耐えていました。
その原因は。
ぴくり。
なでなで。
ぴくぴく。
なでなで。
「あー。嬢ちゃんや。そろそろ俺の耳に触るのに飽きてくれないか?」
「じりゅ。おみみ、ふあふあぁ」
「ぷはっ。と、とうぶ、ん。飽きなさそうですね・・・ふふふ」
るうはジルが犬だと思っていたわけですが、狼族だと説明されて更に嬉しくなったのです。
るうは前世の記憶として日本人だった自分のことを覚えているので、狼をかっこいいとか可愛いと思っていてもテレビでしか見たことありませんでした。
ましてや触れば噛み付かれるということを一般常識として知っていたため、意思疎通が出来て、更に触っても噛まれないということにテンションが上がってしまったのでしょう。
思わずといった感じで伸ばされたるうの小さな手にジルは反応出来なくもなかったのです。
ですが、るうを自分の腕に抱いているという今の状態で早い動きをすれば、るうが驚いてしまうかもしれないと思い、大人しくその小さな手の餌食となることを選んだのでした。
256人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「愛され」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ダリア - やはり貴方様の書く作品は迚素晴らしい物ですね!るうちゃん物凄く好きです!可愛い!登場人物は全員好きになってしまいました!! (2022年9月15日 3時) (レス) @page50 id: d57692a101 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - やほ子さん» 読んでくださっていたのですね。ありがとうございます!今は繁忙期で少し忙しくて更新が遅いですが今後もよろしくお願いします^^ (2021年3月17日 0時) (レス) id: ef139e1273 (このIDを非表示/違反報告)
やほ子(プロフ) - 瑠璃色の夢さん» なるほど!!私少し前に読んでました!リメイク版が見れるなんてうれしいです! (2021年3月16日 21時) (レス) id: d9cd79b552 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - やほ子さん» コメントありがとうございます。こちらは以前別サイトで投稿していた小説のリメイク版になります^^現在は瑠璃色の夢という名でしていますが以前は瑠璃夢という名で投稿しておりました。 (2021年3月16日 15時) (レス) id: ef139e1273 (このIDを非表示/違反報告)
やほ子(プロフ) - この小説他のサイトにも投稿してらっしゃったりしますか? (2021年3月16日 14時) (レス) id: d9cd79b552 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:瑠璃色の夢 | 作成日時:2020年1月29日 16時