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それから京本くんと話す機会はなく、紗英ちゃんに伝えた通り本当にどうこうならなかった。
でも、みんなと楽しそうに話していたり、苦手そうな体育の授業を一生懸命受けている京本くんを遠目に眺めているだけで、十分幸せだった。
やっぱり私みたいなやつはこうやって大人しくしているべきなんだと、再認識した９月末、
席替えで、京本くんが前の席になった。
「やった、後ろの席Aさんだ」
私のほうを向いてそう微笑まれて、心臓がどうにかなりそうだった。
「・・・う、ん」
「なんでカタコトなの笑」
「・・・ごめん笑」
なんかこの会話、初めて話したときみたいだね。そう言葉を続けようとしたけど、京本くんが覚えてるわけないかと思い口を閉じた。
「なんか、初めて話した時のこと思い出すね笑 ほら、Aさんが友達の代わりに日誌書いてた時」
「え・・・」
「もしかして、覚えてない・・・？」
思い出していたことが同じで驚いていると、勘違いした京本くんが不安そうに覗き込んできた。
「覚えてる！！！」
誤解を解きたくて出した声は思ったより大きくなってしまった。
「あ、ごめん・・・ 私もその時みたいだなって思ってたから、びっくりして・・・」
「なんだ、良かった笑 覚えてなかったらどうしようかと思っちゃった笑」
「そんなわけないよ笑」
「てか、Aさんが大きい声だしてるとこ初めて見た笑」
「・・・ごめん・・・」
「ううん、ギャップあってかわいかったよ笑」
「・・・え」
かわいいって言った・・・？今・・・
戸惑っていたら、「たいがー」と京本くんを呼ぶ声がした。
「じゃあAさん、また後でね」
京本くんはそう言って、呼ばれたほうへ歩いて行った。
私は真っ赤な顔をどうにかしようと、水を飲んで深呼吸をした。
でも、この苦しいくらいの胸のときめきは、収まることを知らなかった。
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作者名：あいす | 作成日時：2022年8月10日 2時
