エピメディウム (ページ3)

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きっかけは、学校にも慣れてきた６月のことだった。

「今日部活なのにどうしよう・・・遅れたら𠮟られる・・・」

紗英ちゃんが家の用事で先に帰ったので、一人で帰ろうと準備をしていた時。

友達が日誌を抱え、泣きそうな顔でそう言っていたのを聞いた。

「じゃあ、私代わりに書いて出しておくよ」

「え、Aいいの！ほんとごめん、頼んでいい？」

「全然いいよ、私帰宅部だし笑」

そう言って日誌を受け取ると、友達はほっとしたように教室を出ていった。

自分の席に座り、日誌をちょうど半分書き終えたとき。

ドアが開く音がして、顔を上げた。

「あれ、まだいたんだ」

そこには、王子と呼ばれ有名な京本くんがいた。

「・・・は、い」

初めて話すので緊張して、そんな返事をしてしまった。

「何で敬語なの笑同じクラスじゃん笑」

綺麗な笑顔でそう言った君に、胸が高鳴ったのを感じた。

「・・・そ、うだね、ごめん笑」

「あれ、Aさん今日日直だったっけ」

京本くんは前の席に座り、私の手元を見てそう聞いた。

「ううん、友達の代わりに」

「へえ、優しいね」

「全然優しくなんかないよ、やりたくてやっただけだから笑」

「それを優しいっていうんだよ、俺だったら絶対頼まれてもやんない笑」

京本くんはそう言って笑ったけれど、きっと彼も友達から頼まれたらやるのだろう。

京本くんは、優しくて、友達思いで、みんなの人気者だった。

「京本くんはどうしてまだ残ってたの？」

「俺は先生に頼まれてたプリント出してきた。ちょっとおしゃべりしすぎちゃったけど笑」

「先生とも仲いいんだね笑・・・すごいなあ、京本くんは」

「え、何で？笑」

「みんなと仲いいから笑私なんて、少ししか友達いないし、男子とはいまだにまともに話せないし」

言ってから、あ、と後悔した。初めて話したただのクラスメイトからこんなこと言われても、困るだけなのに。

「Aさんと話したがってる人はたくさんいると思うよ、現に俺もそのうちの一人だったし。それに、たった今目の前にできたじゃん。異性の友達。」

京本くんはそう言って、照れくさそうに微笑んだ。こんなの、好きになるしかなかった。

全て、彼の思惑通りだったのに。