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教室に入ると、京本くんが嬉しそうな顔でかけ寄ってくる。
「Aちゃん、同じクラスだよ」
そう微笑むので、私もつられて笑みがこぼれる。
お互いに「よかった」と喜んで、私は席に着いた。
北斗はこちらに見向きもせず、静かに本を読んでいた。毎日言ってくれた「おはよう」という挨拶はない。もう、終わってしまったんだと。理解するには十分だった。
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紗英ちゃんとはクラスが分かれて、北斗とはあれ以来話していないので、私の話し相手は京本くんだけとなった。委員会も京本くんと同じものに入った。
クラスに友達はいたが、紗英ちゃんのように一緒に遊びに行くような友達はいなかった。
「今日Aちゃんの家行っていい?」
「うん、いいよ」
私の両親は共働きで二人とも帰ってくるのが遅いので、家に京本くんを呼ぶことは多かった。
「よかった、一緒に映画見よ」
あれ以来、京本くんがあの日みたいな冷たい声を発することはなかった。
だから私は、忘れかけていたんだ。
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作者名:あいす | 作成日時:2022年8月10日 2時