__5 ページ5
.
伊吹さんから昨日のみんなの様子を聞いていたら、あっという間に目的地に到着した。
前に連れてきてくれたあの海だ。
「この場所…好きです」
「ほんと？気に入ってくれてよかった〜。
美味しいおにぎり買ってきたから一緒に食べようよ。色んな具あるから、好きなの選んで！
…おにぎり選んでるときにさ、俺まだAちゃんの好きなもの全然知らねぇんだな〜と思ってちょっと悲しかったっていう裏話ね」
「自分のために選んでもらったものなら、全部嬉しいですよ？」
「また！そんな可愛いこと言う〜」
コンクリートの縁に2人で並んで座る。
美味しいおにぎりを頬張る。
幸せな時間。
「今日はいつもみたいに口いっぱいにして食うんだな。ほんと、うまそうに食うよな〜」
そう言えば、前は色々いっぱいいっぱいだったな。
この食べ方は昔からで、無意識にやってしまう。
おにぎりを食べ終え、海辺を散歩する。
風が心地良い。
「散歩終わったら送り届けるつもりだけど、隊長んちと芝浦署、どっちがいい？」
そっか。
散歩が終わったら、またひとり…
「あ、また寂し〜！って顔してる。俺は元気だし、Aちゃんが大丈夫なら夜まで一緒にいる？」
「…はい！」
「こっちが嬉しくなる返事だな〜」
「伊吹さんといるの、落ち着くんです。
だから…」
もう隠してちゃいけない。
話してしまいたい。
「伊吹さんに、迷惑かけてもいいですか…？」
コンクリートのところまで戻り、また腰掛ける。
今度は伊吹さんの方を向いて。
母親を事故で亡くしたこと。
父親に閉じ込められていたこと。
逃げ出して、ゆづるちゃんに助けを求めたこと。
手が震えてくると、伊吹さんがそっと握ってくれた。
「大丈夫。今のことじゃない。俺もここにいる。ゆっくりでいいよ」
Aちゃんが隊長のところまで裸足で逃げてきたところまでは、志摩から聞いていた。
それでもやっぱり、本人の口から聞くと結構きついもんがあるな。
胸の奥の方がキリキリする。
「あの人から逃げ出した日、本当は母のところに行こうとしてたんです」
「お母さんとこ？」
「どうしても母に会いたくて。愛されていた、幸せだったあの頃に戻りたくて…」
「それ、って…」
"お墓"じゃなくて、"あの世"…？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 813人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
終(プロフ) - 第一章がどれかわからないので教えてもらえると助かります (2021年1月18日 17時) (
レス) id: 8e51380abb (このIDを非表示/違反報告)
おーたむ(プロフ) - リリアさん» こんな文才を褒めて頂けるなんて光栄すぎます！！！読み直してもらえる作品になっただなんて（ ; ; ）すれ違い、かしこまりました(^^) (2020年10月19日 8時) (レス) id: e55edcc942 (このIDを非表示/違反報告)
リリア - 凄く面白かったです！伊吹さんの優しさと夢主さんの健気で可愛い所が最高です。おーたむ様の文才に感動しました！何回も読み直してしまうほど好きです！すれ違いや喧嘩したりする話も読んでみたいです。これからも応援しております。 (2020年10月18日 3時) (レス) id: daabe5a53e (このIDを非表示/違反報告)
おーたむ(プロフ) - 由羽さん» 文面を褒めて頂けるなんて…ロス同じですね（ ; ; ）とても嬉しいコメントありがとうございます…！！！イチャこらと恋バナ、承知しました♪ (2020年10月15日 7時) (レス) id: e55edcc942 (このIDを非表示/違反報告)
由羽 - とても面白かったです。台詞も文章もとても素敵で毎日更新されるのを楽しみにしてました。私もロスが続いているので、できればまた書いていただけたら嬉しいです。(伊吹とのイチャイチャや、伊吹と志摩の恋バナを書いていただけたら嬉しいです)ありがとうございました！ (2020年10月14日 19時) (レス) id: 7535220b5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おーたむ | 作成日時：2020年9月12日 14時
