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今回の作戦は先行寄りの差し……まあいつも通りといえばいつも通りだが、ルドルフのやや後ろについた。先頭は譲り合いをしているのかスローペースで、2000なのに半分の距離で1分を超えてしまうかもしれない。

まあそれは別に構わない。どうせ抜き返すし、遅い方がスタミナも貯められる。
すう、と息を吸ってペースキープを図った。その間に二、三人抜かれるが問題ない。1000を過ぎないうちにこんなに団子になっているのだからまた後で抜き返せる。

半分超えた頃にちら、とルドルフは一瞬右後ろを見て、その場の距離を測ってギアを上げた。ここから仕掛けるつもりらしいが……

『シンボリルドルフ上がって行きます、その後ろビゼンニシキ 』

こちらも同じことを考えていた。

となると先頭も同じことを考えていたのか加速した。二人、三人ほど抜いたが先頭はまだ抜けず追いかける形になっている。

大ケヤキが見えたところで体勢を内側に、そして低く倒して加速する。曲線(コーナー)の弧をぴったりと描くように走り、直線に入った。

『さあここで直線に入りました!先頭は引き続きテイクオフプレーン!後続が差を詰めて、ここで先頭シンボリルドルフに変わった!』

わあっと会場が湧いた。絶対勝者の皇帝のレースはつまらないと零す人間もいる一方、やはり勝つと安心感があるためか案の定人気が高い。

『残り600メートル、ビゼンニシキ突っ込んできた!』

それでも勝つのはあたしだ。あたしだって、何も準備せずに挑んできたわけじゃないんだ!

グッと足に力を入れ、強く地面を蹴る。地面を捲り、末脚を使って最前線を目指して速度を上げ、ルドルフの背を追う。皮膚は皇帝の抜かせないという圧でぞわぞわと粟立ち、一瞬足がすくみそうになる。
ルドルフもすぐそばにいるあたしに気付き、更に加速した。

もっとだ、もっと足を入れないと抜かせない。残り400メートル、ここで抜かせないと勝てない!

ルドルフに勝ちたい。他でも無い私のライバルに、キミと競って、勝ちたい!

「勝負だ……勝負だっ!シンボリルドルフ!!!」
「ああ、来い!ビゼンニシキ!」

目の前の相手を抜くこと、ゴールまでの距離、集中すると、水の中にいるように何も聞こえなくなった。過剰に集中しているのか周りのものは全て遅く見えて、次のルドルフの手すらもわかる。

あとアタマ差、クビ差、どうしても差が縮まらない。それでも、あたしは!

「ああああぁぁーー!!!!」

絶対にルドルフに勝つんだ!

80→←78  育成目標 天皇賞・秋 1着



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作者名:あきんど | 作成日時:2022年12月12日 21時

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