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昼食は、初日はみんなでカレー作り。寸胴に入ったカレーがいくつもコンロの上に並んでおり、まさに圧巻という光景だった。
どこで食べようかなと空いている席を探すと、「こっちだビゼンニシキ!」とニホンピロウイナー先輩が手を上げていた。……まあ、座れたらどこでもいいか。
彼女の前の席に座ると、「いっぱい食えよ」と福神漬けをてんこ盛りにされた。あたしらっきょう派なのにな。
「ピロウイナー先輩 」
「うん?」
「小学生の時から思ってたんですけど、なんで先輩はあたしに構うんですか?」
「一緒に走りたいからに決まってんだろ。……てか、お前トレーナーは?合宿参加してんだろ?」
「今回は雑用で参加ですから。夏はガッツリ休むって決めてたんで 」
「ふーん。そんなんじゃ菊花賞、ルドルフに負けちまうぞ 」
「や、あたし菊花賞は…… 」
ピロウイナー先輩をふと見ると、スプーンを咥えてプラプラさせている。行儀悪いなぁと思いつつ、カレーを掬って口に運んだ。
「んだよ回避か。秋からは何走んだ?」
「……目標はマイルCS 」
「おっ!マイルかぁ!てことはやっと公式でやり合えるってわけか!」
ピロウイナー先輩はとても嬉しそうに立ち上がった。「肉やるよ」と牛肉をひょいひょいとこちらの皿に移してくるが、こんなに食べられないからやめてほしい。
「流石にいきなり行くにしても、ぶっつけで行くのは怖いからスワンステークスから入ります 」
「アタシもそれ走るぜ。……へへ、小学生の頃から誘っても無視されてた分、しっかり走ってやるからな!絶対負けないから!」
「こちらこそ、後で吠え面かかないでくださいね 」
カレーを完食し、「ごちそうさまでした」と手を合わせて食器を戻した。
……さて。
今年のマイルCSには最強スプリンターが出走することがわかった。とすればら彼女のライバルであるハッピープログレス先輩や、他のマイルの名手は沢山出走するだろう。
負けるわけにはいかない。公式での練習に参加できないなら早朝や夜中に走ればいい。休むと言っても走らないと体が鈍るのだからきっと、誰も何も言わない。
新しい戦場……マイル路線でも、勝つのはこの『ビゼンニシキ』だ。
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作者名:あきんど | 作成日時:2022年12月12日 21時