錦糸を紡ぐ 2【宀マ娘百合夢】 (ページ20)

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リハビリのための入院を続け、一週間。恐らく備品の布ギプスが取れないからまだ退院はできないし、痛い。痛み止めを飲んでやっと気にせず動くことはできるが、切れた時が一番辛い。

おまけに走れない、どころかリハビリの成果が見られない。まだ一週間と言えばそれまでだが、されど一週間だ。松葉杖で何度もバランスを崩したし、肩が痛くなってくる。ため息をついてリハビリを休憩している間、テレビを見るとジャパンカップの特集が放送されていた。

『第四回……ですね、ジャパンカップ。前回は惜しいところまでは行きましたが、今年はどうでしょう？』
『今年は期待できますよ。なんと言ってもミスターシービーとシンボリルドルフ、彼女達三冠ウマ娘が同時出走ですから！』

「…………ルドルフ」

買ってみせると自信たっぷりに言い切ったあの顔が思い浮かぶ。……あたしだって、今回怪我なんてしなけりゃマイルCSに出走できた。あのレースだって留学生や海外ウマ娘も出走できるんだ。

『他の日本勢は、桜花賞ウマ娘のダイアナソロンと中距離ならシービーにも引けを取らないカツラギエース……。強豪ですが、どう見ますか？』
『ダイアナソロンは『左耳』限定戦でもセンターを外しませんでしたからね。期待はできますが、『右耳』の子、そして海外の選手と比べると少々…… 。
カツラギエースは事前のインタビューで『差す走りをしたい』と答えていましたね。今まで獲ったタイトルも全て差しでの勝利……しかしシンボリルドルフがいる以上抜け出すのは厳しいのではないかと』

そりゃあそうだ、ルドルフはあたしよりも強い。皐月賞はあたしを除いたら合計五バ身と1/4、ダービーだって余力を残したまま勝った。

……だけど、何故か確実に勝てるとは思えない。合宿が終わって、エース先輩とすれ違った時に感じた気迫。気弱そうな表情でシービーと話していたが、ぞくりとするような、『絶対にお前を負かしてやる』と言いたげな空気。

「……それでもルドルフは勝つ」

ぼそりと呟いた言葉は、自分で言っておいてもどうも信じられなかった。