左腕の代償 ページ9
私の怪我は、遊郭にいた五人の中で一番軽傷だった。
宇髄さんは左目と左腕が無くなるし、善逸は両足骨折。炭治郎と伊之助は意識不明。
私の怪我は左手と左の脇腹、右の太腿に深めの傷ができただけだった。
それでも一応縫うほどの傷は負っているわけで、二週間は安静にと言われた。
修行もできず、鬼も斬れず。頭はあの日の戦闘の反省を繰り返していた。
宇髄さんは音柱を引退したらしい。
私のせいだ。
宇髄さんが呼んでいる、と烏が告げたので音柱の屋敷へと足を運んだ。
「お前、柱になれ」
宇髄さんは私を呼びつけてすぐ、その言葉を口にした。
「はい」と、肯定の言葉を迷わず口にする。
理由は単純。宇髄さんの左腕を奪ったのが私の判断によるものだからだ。
何度も思い出すあの光景。
もしも黒煙の中、もっと早くに二対一の展開に持っていけたら。
突きで頸を狙うのではなく、最初から宇髄さんに頸を斬るのを任せていたら。
両頬に感触があった。
顔を上げると、怒った音をさせた宇髄さんが私の頬を親指と残りの四本で挟んでいる。
結構、痛い。
「お前は本っ当、地味だな!!」
最近ちょーっと派手になってきたのにまたコレか!!と宇髄さんは声を荒げている。
「俺はお前の判断を疑ったことなんざ一度もねぇわ!一人も欠けずに済んだだろうが!!上弦舐めんじゃねぇぞ!毒耐性のないお前が前になんぞ出てみろ、俺はお前の事蹴り飛ばしてでも離脱させてたわ!!」
だからそんな地味な面すんじゃねぇ!!俺の左腕に謝れ!!と宇髄さんがまくし立てる。
「……ごめんなさい」
「うるっせぇ俺に謝るな馬鹿!!」
今度は頭に拳が飛んできた。理不尽だ。
はぁ、と深いため息の後、落ち着いた口調で宇髄さんは話し始めた。
「左手落としたのは俺の判断だ。それが最善だったのはお前も分かってるだろ。」
最善だった、という宇髄さんの言葉が耳に残る。
それでももし、私がもっと強かったら。もっと早く判断出来ていたら。
「柱になれば、強くなれますか。」
冨岡さんと肩を並べられるようになれるんですよね、と私は宇髄さんに聞いた。
宇髄さんはその言葉を聞いてぽかん、とした表情になった後、
ぐしゃぐしゃと私の頭を撫でながら、「そーかそーか!やっぱ冨岡かー!」と嬉しそうな声で言った。
「よし、冨岡ん所行って許可取ってくるぞ!!お前も来い!」
先程の怒った声はどこへやら。
宇髄さんは嬉しそうな音を立てながら、私の手を引いて歩き出した。
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月22日 12時