【鬼滅の刃】氷の刃【参】 (ページ26)

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束の間の休息ページ26

かちゃんかちゃん

左隣から絶え間なく聞こえる陶器の音を聞きながら、Aは煮物を口に運んだ。
(……蜜璃さん、相変わらずよく食べるなぁ)
甘露寺の隣に座っている自分の前にまで侵食しだした空の器の山を見上げる。
もちろんこの空の器には料理が入っていたのだが、彼女には全く物足りなかったようだ。
ひぃひぃと汗を流しながら次の料理を運び、空の器を下げるひょっとこのお面の姿に慣れてきた頃、自分の右側に座っている炭治郎が蜜璃さんに賞賛の言葉を浴びせた。
「すごいですね！」
「そうかな？今日はそんなに食べてないけど」
「俺もいっぱい食べて強くなります！」
すっかり打ち解けた様子の炭治郎と甘露寺の姿を見つめながら、Aは穏やかに微笑んだ。

ゆっくりしたのは久しぶりだ。
里へ行く許可を出してくれたお館様と蜜璃さんに感謝しなきゃな…と思考を巡らせていると、右隣の炭治郎が気になる話題を持ちかけた。

「そういえば、甘露寺さんとAが温泉で会ったのは不死川玄弥という俺の同期でしたよ。」

不死川玄弥。
初めて聞く名前だったが、苗字には聞き覚えがある。

「そうなんだ。風柱の不死川さんと苗字が一緒。似てる…気がするなぁ…」
先程会ったばかりの同期の顔を思い浮かべながら返答する。不死川さんの弟だろうか。
その疑惑は、甘露寺の言葉によって明白になる。

「そうだったの…不死川さんの弟さんでしょ？でも不死川さん、弟いないって言ってたの。仲悪いのかしら。切ないわね」
どうやら弟という推測は正しかったらしい。
甘露寺の言葉に炭治郎もどうしてだろう、と悲しそうな表情を浮かべた。

「私のうちは五人姉弟だけど仲良しだから、よくわからなくて不死川兄弟怖って思ったわ」
先程までAの背中に張り付いていた禰豆子が、ごろんと床に寝そべる。
禰豆子の体を楽しそうにくすぐる甘露寺の姿は、今本人が話した通り年下の扱いに慣れているようだった。
可愛いわねぇと禰豆子に微笑むと、禰豆子も甘露寺にぎゅっと抱き着いて愛着を示す。
「可愛い…」
和気あいあいとした二人の様子に、Aは思わず声を漏らす。
「可愛いなぁ」
炭治郎も二人の姿に嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「玄弥はまだ来ないですね。」
「あの子来ないみたいよ。全然食事してないみたい。」
「後で、何か持って行ってあげましょうか。」

「ご馳走様でした」と三人で手を合わせ、食事を終える。
里はすっかり日が落ちて、冷たい風が吹き込んできていた。