空白の二か月 ページ22
隠の男は蝶屋敷を歩いていた。名は、後藤という。
後藤と炭治郎は柱合会議や遊郭で瀕死の状態を見つけたりと、何かと縁があった。
そうして炭治郎と接点を持つうちに、自分より年下なのにも関わらず命を賭けて鬼を狩る彼らに、後藤は情が移りつつあった。
彼が手に持ったカステラは、炭治郎への贈り物である。
病室に入ると、陶器の破片が散乱していた。
破片と一緒にぐちゃぐちゃになった花とびしょびしょに濡れた床であぁ、これは花瓶だったのか、と結論付ける。
そして、その犯人であろう少女はこちらを振り向きもせず炭治郎の事をじっと見つめていた。
片付けろや、と内心で毒づく。
少女の名前は栗花落カナヲ。
この少女の声を、後藤は聞いたことがなかった。
この花瓶もそうだが、やったらやりっぱなし。この少女に対しては変わった子だな、という印象を密かに抱いている。
もちろん口には出さない。階級はこの少女の方がずっと上だからだ。
何も言わずに花瓶を片付け、カナヲに声をかける。
「あのーこれカステラ置いとくんで、暫くしたら下げてください。痛みそうだったら食べちゃっていいので。」
「ありがとう…ございます……」
返事をしたのは、二か月間意識が戻っていなかった炭治郎だった。
「意識戻ってんじゃねーか!もっと騒げやアア!!」
この際階級なんて知るもんか、と大声を張り上げる後藤。
心配していた蝶屋敷の子ども達にも急いで声をかけると子ども達は炭治郎の元へ駆け寄り、無事でよかったと泣いた。
「他の皆は…大丈夫ですか……?」
満身創痍の炭治郎は、後藤に対してそんな問いを投げかけた。
お人好しな奴だな、と思いながら後藤は遊郭の後の四人の様子を炭治郎に伝える。
「黄色い頭の奴は一昨日だっけ?復帰してるぜ。もう任務に出てるらしい、嫌がりながら。音柱と紫陽花羽織の女の子は自分で歩いてたな。隠は全員引いてたよ頑丈すぎて。」
「そうか…伊之助は?」
伊之助はとても状態が悪く、一時は危ない状態だったと涙を流しながらアオイは話した。
そんな伊之助も炭治郎の7日前に目を覚ましたらしい。
それから一週間後、炭治郎は任務復帰のため機能回復訓練に勤しんでいた。
「あっ、俺が眠っている間に刀届いてない?刃毀れしちゃったんだけど。」
そう言うと同時、ぴしりと空気が張り詰めた。
「鋼鐵塚さんから手紙は来てます。…ご覧になります?」
その手紙がきっかけで、炭治郎は刀鍛冶の里へと足を運ぶことになる。
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月22日 12時