不調 ページ21
「最近、怪我が多い気がするんですが。」
蝶屋敷で腕に包帯を巻かれながら、私はしのぶさんにそんなことを言われた。
「…未熟ですから。宇髄さんにはまだまだ届きませんね。」
宇髄さんの修業から一か月が経ち、私は実戦でも最速の状態を使っている。
そこで問題が生じた。感覚にズレがあるのだ。
自分の中では「もっと続く」という確信があって最速の状態を続けているのに、意識が飛びかける事が時々ある。
私の怪我はほぼそれが原因だ。
確実に遊郭の時より強くなっているはずなのになんだか調子が悪い。
「それにしても、Aさんの実力ならこんな怪我しないでしょう。一日で鬼を狩りすぎです。」
明らかに過剰労働ですよ、としのぶさんは怒った音を立てながら言った。
「買いかぶりすぎですよ」と言うとしのぶさんはため息をついて、
「本来ならば私ではなく他に咎める人がいると思うんですけどね。冨岡さんは何をしているんでしょうか。」
しのぶはすらりとAの心を揺さぶる名前を口にした。
冨岡さんとは、あれから一か月顔を合わせていない。
俯くAに何かを察したのか、しのぶは「まさか、振ったんですかあの男」と口を開く。
その瞬間、しのぶさんから物凄い怒りの音がした。
「し、しのぶさん?どうしたんですか?」
「いえ、ちょっとあの鈍感虫に本音を聞きに行くだけですよ。離してくださいAさん。」
ゴゴゴゴと物凄い音を立てながら立ち上がるしのぶさんを必死に食い止める。
「ち、違うんです!私が弱いから、冨岡さんが不安なだけで、その、私が悪いので!!」
「女性にそんなこと言わせるとか最低ですね本当。Aさんにまで嫌われてどうするんでしょうか、あの人。」
まずい、完全に墓穴を掘ってしまった。
私とほとんど背の変わらないしのぶさんは私の手を振りほどこうと思い切り力を振り絞っている。
それに負けじと私はしのぶさんの細い腰に両腕を回し必死で止めようとする。
そんな均衡を破ったのは、一人の女性の声だった。
「話は聞かせてもらったわ!!」
元気いっぱいの、明るい声だ。
現れたのは蜜璃さんだった。きらきらと目を輝かせて私の方を見ている。
「恋のお悩みね!」
何故か自信満々に、蜜璃さんはそう言った。
「刀鍛冶の里に温泉があるの!そこでお話ししましょう!」
蜜璃さんがそう言うと同時、自分の不調の一番の原因を思い出した。
思わず「あ、」と声が漏れる。
「私の刀、まだ届いてない…」
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月22日 12時