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願う ページ12

「禰豆子が人を喰った時、俺は腹を切らねばならない。」

冨岡さんが私に伝えた事。

それは、「炭治郎と禰豆子のために命を賭ける」というものだった。

那田蜘蛛山で私が重傷を負って寝込んでいる間、柱合会議で決まった事らしい。


冨岡さんらしいなぁ、と思った。

冨岡さんは、他人のために自分の命を張ることができる人だ。

そして、自分の命を大切にすることができない。


大切な人の命を踏み台に自分が生き残るというのは、とても苦しい事だから。

冨岡さんからはいつだって罪悪感と自己否定の音がする。


「……怒らないんだな、お前は。」

冨岡さんがぽつりと呟いた。

怒れなかった。

炭治郎と禰豆子を命を賭して守ろうとする冨岡さんが誇らしいと思った。

そして何より、私は同じ立場に立ったらきっと同じ選択をする。


だから、私には冨岡さんを怒ることができなかった。


「お館様に、Aと義勇は似ている、と言われたことがあったんです。」

穏やかに微笑んだお館様からは、少しだけ寂しい音がしていた。

「今、やっとその意味が分かりました。」

私は妹と、弟と、おじいちゃんの命を踏み台にして今を生きている。

「冨岡さんも、私も、『あの時自分が死んでいれば』って気持ちが消えないんですよね。」



どんなに鬼を斬っても、どんなに怪我を負っても消えることのない痛み。

私達の抱える罪悪感は、きっと同じ音がするのだろう。

冨岡さんと私は、死んだ人に報いるために必死で鬼を狩り、なんとか生きている。

自分の命を大切にできない。それを守るために大切な人が死んでしまったから。



私が死にかけたり、怪我をする度に冨岡さんは怒ってくれた。

でも、私も同じくらい冨岡さんが怪我したり、死ぬのが怖い。



どれだけ罪悪感を抱えていようと、大切な人が出来てしまう。

私は馬鹿だと思う。



「私、自分の命よりも冨岡さんのことが大切なんです。」

そう言うと同時、冨岡さんの心音がすぐ近くで聞こえた。

冨岡さんの匂いがする。あったかいなぁ。

「俺も、自分の命よりもお前の方が大切だ。」

だから死なないでくれ、と私の体を抱きしめて冨岡さんは言った。

「じゃあ、どちらが先に死んでも恨みっこなしですね。」


冨岡さんの背に手を回す。

消えない罪悪感を抱えながら、それでも富岡さんと一緒に生きたいと願う。


「一緒に生きましょうね」と冨岡さんに話しかける。

冨岡さんは「あぁ」と言って、私を抱く手の力を少しだけ強めた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 冨岡義勇   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月22日 12時

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